あの夏が飽和する。【轟焦凍】 (ページ2)

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とりあえず、俺は震えているAを家に入れ、タオルを渡した

姉さんの服を貸して、風邪を引かないように着替えをすすめた

Aは大分落ち着いたのか、服を着替え戻ってきてから、ありがとうと言って笑った

俺はココアを二人分用意し、机におく

Aは息をふきかけ、冷ましたココアを一口飲む

「......」

聞こうか聞くまいか

人を殺したという話が気になりながらも、聞く勇気はなかった

「殺したのは隣の席の、いつも虐めてくるアイツなんだ」

「え？」

いきなりきいていいのか迷っていた事を話され、思わず聞き返してしまった

しかも隣の席

Aの隣の席のやつの顔を思い出す

「昨日もいつもみたいに、殴られてた」

細い腕を少しだけ押さえて、Aは話す

「......もう嫌になって、肩を突き飛ばして、打ち所が悪かったんだ」

どれ程強く押したのだろうと思う

そんな俺をみたあいつは俺の考えていることがわかったのか「ほんの少し抵抗するために押しただけだよ」と言った

「まぁでも、普段は抵抗なんてしないから、向こうはビックリしたんだろうね」

「そうか」

俺の反応を見て、口元に弧を描くあいつ

ほんのすこし、きれいに感じた

人を殺した話を聞いているはずなのに、まるで世間話でもするかのようにいつも通りだった