三十七話:覇気 ページ30
北の海で航海してちょうど一年が経った。
その日は無人島に船を停めて、皆でキャンプをしながら浜辺で遊んだり、訓練したりして過ごしていたのだが、
みんなと組み手大会をしていたら、ローに呼び出されて、船を停めていた浜辺と反対側のところに来た。
二人きりは久しぶりで、なんだか妙にドキドキする。
ローの背中は出会った時と比べると随分高くなってしまって、少し遠くに感じた。
浜辺に来ると、ローはぴたりと足を止めた。が、一向に話し始める様子はない。
何も喋らないからか、二人きりだからか、波の音がやけに大きく響いて、それ以上に自分の心臓の音が大きく聞こえてくる。
＿＿まさか、まさかローは…
「A」
「ひゃ、ひゃいっ…！？」
「そろそろ、言っておいた方が良いと思ってな」
彼が振り返るのと同時に、潮風がふわりと吹き込んで、彼は帽子を押さえる。
思わず変な声が出て、顔が熱くなる。それを気にする様子もなく、ローはゆっくりと口を開く。
次にくる言葉を自分が受け止めきれるかどうかわからなくて、ぎゅっと目を瞑る。
が
「お前、『覇気』って知ってるか」
「へ…？」
思っていたものと全く別の話題で、面食らって間抜けな声が出る。
そして、結構期待していた自分が急に恥ずかしくなって、小さく俯いてしまう。
「は、覇気って…なに？」
ローがどんな顔をしているか分からなくて、恐る恐る顔を上げると、
別段、いつもどおりに自分を見つめていて、Aは小さくそう尋ねながら目線を合わせないようにする。
今、彼の目を見られそうになかった。
「やっぱり、お前のは生まれつきか…」
「？ う、生まれつき…？」
ローの独り言に首を傾げると、彼はいや、と呟いてから、またこちらを見つめる。
「覇気ってのは、『意志の力』だ。まぁ、体の中を流れるエネルギーみてェなもんだ」
「意志の力…」
「覇気は大きく分けて三つ。武装色、見聞色、そして覇王色だ」
ローは指を順番に立てながらそう説明する。
いきなりの話に全然ついていけないが、取りあえず相槌を打つ。
なんとなく、ニュアンスは理解できたし。
「お前は昔から耳も鼻も良かったな。俺も最初は単に五感がすぐれてるだけだと思ってた。
けど、お前のそれは多分、見聞色の覇気だ」
Aはローの目に強く見つめられて、思わず顔を赤くしながら固まった。
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弥生(プロフ) - ブルーフェザーさん» ありがとうございますー！今ちょっとネットがない環境にいてコメント返信しか出来ない状況なので気長に待っていただけると嬉しいです！ (2021年4月17日 10時) (
レス) id: 0bb29c5719 (このIDを非表示/違反報告)
ブルーフェザー(プロフ) - 面白いです！更新待ってます！ (2021年4月14日 6時) (レス) id: d01e8aaa3e (このIDを非表示/違反報告)
弥生(プロフ) - めぐちさん» ありがとうございます！！評価トップバッター嬉しいです…！ (2020年12月13日 19時) (レス) id: 02a09e0452 (このIDを非表示/違反報告)
めぐち(プロフ) - 祝、続編です！！ひとつめの高評価入れさせて頂きました。これからも頑張ってください！ (2020年12月12日 23時) (レス) id: 0507494f21 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：弥生 | 作成日時：2020年12月12日 23時
