三十三話:為政者として ページ16
『お前らは、ジークフリートの密輸の証拠を探してくれ。俺は爆弾屋をたたく』
そのローの指示により、シャチとペンギンと合流したシモンは、手分けして目に入る部屋を探し回った。
如何せん、領主邸は広く、調べると一言に言ってもその量は計り知れない。
以前までこの場所に住んでいたシモンでさえ、全体を把握しているわけではない。
「ったく、証拠って言うけど、例えばどんなだよー…こういうのって頭良い奴がやるもんじゃね？ あんたもそう思うだろ」
見つけた資料室をあさりながらシャチはシモンに声をかける。
調べ終わったものは丁寧に戻しているシモンとは真逆に、シャチはその辺に資料を放り投げて次々と棚や引き出しをひっかきまわしていた。
「ま、まぁ…ですが私は戦闘ができないので、こういう事でしか役に立てませんから…
島の住民の為だと思えば、これくらいは…」
「っかー！ なーんであんたみてェなのが引きずりおろされたんだよ。汚職のおの字もねェじゃんか。島の奴らはそんな噂、本当に信じたのかよ？」
「…証拠が、ありましたから。まぁ、捏造されたものですが…。
それに、私が不甲斐ないばかりに、住人を苦しめているのは事実です」
シモンは、この一年間で徴収した税金の帳簿の束を見つけ、その紙面を軽くなぞる。
自分が為政者だったころは、こんなに高額ではなかったけれど、ジークフリートは住民から、とりわけ、貴族以外の庶民たちから金を巻き上げ、自分や貴族たちは私腹を肥やして、他の住民たちは貧困にあえいでいる。
自分がもっと、用心深ければ、こんなことには…
悔しさと、住民への罪悪感とで、手に持っていた書類をぐしゃりと握り締めた。
「真面目だねェ。ま、船長の命令だからな。俺らも協力するぜ。俺もあんたみたいなやつ、嫌いじゃないしさ」
シャチはひらひらと紙の束を揺らす。
彼の言葉に、ありがとう、と微笑んで振り返ったシモンは、彼の持つ紙切れを見て目を見開く。
「シャチくん、それを少し見せてくれ！」
ぱしっ、と奪い取るようにシャチの手から書類を取り上げ、ぺらぺらとめくって素早く目を通す。
「ど、どした？ それなんのやつなんだ？」
「これは……領主邸の財政帳簿と、その時期と一致する密輸の収入履歴。なんて額だ…
シャチくん、この書類、どこから！？」
あまりの気迫に顔を引きつらせながら、シャチはその書類を見つけた引き出しを指さした。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 180人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ONEPIECE」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
弥生(プロフ) - ブルーフェザーさん» ありがとうございますー！今ちょっとネットがない環境にいてコメント返信しか出来ない状況なので気長に待っていただけると嬉しいです！ (2021年4月17日 10時) (
レス) id: 0bb29c5719 (このIDを非表示/違反報告)
ブルーフェザー(プロフ) - 面白いです！更新待ってます！ (2021年4月14日 6時) (レス) id: d01e8aaa3e (このIDを非表示/違反報告)
弥生(プロフ) - めぐちさん» ありがとうございます！！評価トップバッター嬉しいです…！ (2020年12月13日 19時) (レス) id: 02a09e0452 (このIDを非表示/違反報告)
めぐち(プロフ) - 祝、続編です！！ひとつめの高評価入れさせて頂きました。これからも頑張ってください！ (2020年12月12日 23時) (レス) id: 0507494f21 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：弥生 | 作成日時：2020年12月12日 23時
