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部屋中を埋め尽くすような血だまりに、一瞬、全て彼女の出血によるものかと思ってぎょっとしたが、完全に乾ききってこびりついているものや、酸化して真っ黒になったものもあり、どうやらただ血の跡をふき取っていないだけのようだった。
Aも、脈はあるし、呼吸もしていた。どうやらただ気を失っているだけのようだ。
「A…っ」
シノが涙をにじませながら彼女の傍に駆け寄って身体を揺さぶる。
それをローは制止して、気絶しているだけだ、と告げると、
シノは安心したからか、ボロボロと涙を流してAの手を握り締めた。
前領主はその様子を見て、ふと、Aの言葉を思い出す。
＿＿あぁ、そうか、
「Aさんの言う『大切な人』とは、あなたのことだったんですね」
「は…？」
柔らかく微笑んだ彼に、訳が分からず振り返ると、何やら暖かなまなざしをこちらに向けてくる。
「彼女に尋ねたんです。『何故海賊になったのか』と。
そうしたら、
『大切な人に、誘われたから』だと、そう話してくれました」
その言葉を聞いた途端、ローは目を見開く。
Aが、そんなことを…。
こんな状況なのに、腕の中で目を閉じている彼女を見ていると、頬が緩んで口許がにやけていく。
「(お前は、本当に……)」
それを悟られまいと、全力で顔を下に向けて、表情筋のゆるみが戻るのを待つ。
暫くして、ようやくにやける口を抑えてから、ふっと顔を上げて前領主の方に顔を向けた。
「あんた、この島の前の領主なんだろう。名前は」
「これは、申し遅れました。私はレイノルド・シモン。その通り、私は一年前まで、この島で領主を仰せつかっていました。ですが、ジークフリートと政権を交代し、その後島から亡命しようとした矢先に海賊たちに捕えられてしまったのです。
Aさんとは、別の部屋にある牢の中で一緒に捕えられていました。
でも彼女が目覚めてすぐに、首切りの男に連れ去られてしまった。皮肉なことに、彼女を連れ去って行った首切りの男が、牢の戸の鍵を閉め忘れてくれたおかげで、私はあの部屋から抜け出せたのですが…。
事の発端は全て彼女から聞きました。私にできることがあるならば、なんでもおっしゃってください。島の者たちを守る為なら、この身も捧げる覚悟です」
シモンの強い信念のこもった眼に、ローは力強く頷いた。
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弥生(プロフ) - ブルーフェザーさん» ありがとうございますー！今ちょっとネットがない環境にいてコメント返信しか出来ない状況なので気長に待っていただけると嬉しいです！ (2021年4月17日 10時) (
レス) id: 0bb29c5719 (このIDを非表示/違反報告)
ブルーフェザー(プロフ) - 面白いです！更新待ってます！ (2021年4月14日 6時) (レス) id: d01e8aaa3e (このIDを非表示/違反報告)
弥生(プロフ) - めぐちさん» ありがとうございます！！評価トップバッター嬉しいです…！ (2020年12月13日 19時) (レス) id: 02a09e0452 (このIDを非表示/違反報告)
めぐち(プロフ) - 祝、続編です！！ひとつめの高評価入れさせて頂きました。これからも頑張ってください！ (2020年12月12日 23時) (レス) id: 0507494f21 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：弥生 | 作成日時：2020年12月12日 23時
