三十二話:大切な人 ページ12
足音に気付き、Aはキッと警戒してドアの向こうを睨みつけた。
それを不思議そうにぱちくりと見つめたシモンだったが、かけようとした声はAによって遮られる。
そして、足音はドアの向こうで立ち止まり、ガチャ、と鍵が開く音がして、古びたそのドアは、ぎぃと音を立てて開いた。
そこには、
「よう、嬢ちゃん。さっきぶりだなァ」
首切りのガッシェが、棘のついた不気味な棍棒をもって、立っていた。
「っ…首切りのガッシェ…！！」
ゆっくりと牢に近づいてきて、背中に汗を流しながらじりと後ろに下がるが、あっという間に壁にぶつかる。
するとシモンはAを守るように前に立ちはだかった。
「シモンさん…！ やめてください！」
「そういうわけにはいきません。女性を守るのは、紳士の務めですから…」
そう言って笑うシモンをよそに、ガッシェはきぃっと牢の戸を開けて中に入ってきた。
ゆっくりと近づいてきて、シモンの前に立つと
「お前に用はねェ、レイノルド。どけ」
そう言って、棍棒を振りかぶり、そのままシモンの身体を横に吹き飛ばした。
「シモンさんッ！！」
大きな音を立てて壁に背中を打ち付け、シモンは声にならない叫び声を上げながら床に蹲る。
彼の方を向いて大声を上げると、
目の前のガッシェが今度は自分に向けて棍棒を振りかざし、
鉄製のそれは強くAの脇腹に直撃した。
「いぅッ…！！」
脇腹からお腹の中にかけて走る激痛に、足をばたつかせていると、何やら後ろでジャラジャラと音がして、気がつけばガッシェはAの手錠を、壁に繋がれた鎖から外していた。
そしてガッシェはAの首根っこを掴み、そのまま引きずりながら牢の外へ出た。
「A、さ…ん…」
シモンのかすれた声を最後に、Aはその部屋から連れ出された。
ずるずると引きずられたまま建物の廊下のような場所を移動する。
その最中、Aは何か引っかかるものを覚えていた。
痛みと、臓器がかき回されるような吐き気に、朦朧とした頭で考える。
＿＿＿ガッシェは、さっき、牢の鍵をかけていなかった。
こんな状況だったけれど、それを悟った瞬間微かに希望の光が見えた気がした。
シモンがそれに気づけば、
彼があそこから逃げ出すことができれば、それでもし、ローたちと合流してくれれば…
都合のいい筋書きかとも思ったが、そう期待するしかなかった。
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弥生(プロフ) - ブルーフェザーさん» ありがとうございますー！今ちょっとネットがない環境にいてコメント返信しか出来ない状況なので気長に待っていただけると嬉しいです！ (2021年4月17日 10時) (
レス) id: 0bb29c5719 (このIDを非表示/違反報告)
ブルーフェザー(プロフ) - 面白いです！更新待ってます！ (2021年4月14日 6時) (レス) id: d01e8aaa3e (このIDを非表示/違反報告)
弥生(プロフ) - めぐちさん» ありがとうございます！！評価トップバッター嬉しいです…！ (2020年12月13日 19時) (レス) id: 02a09e0452 (このIDを非表示/違反報告)
めぐち(プロフ) - 祝、続編です！！ひとつめの高評価入れさせて頂きました。これからも頑張ってください！ (2020年12月12日 23時) (レス) id: 0507494f21 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：弥生 | 作成日時：2020年12月12日 23時
