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また、泣き出してしまったシノをベポがあやしてくれている間、ローは何か考え込むように俯いていた。
「ねぇ、ロー」
ふと、自分の中に浮かんだ微かな可能性が、シノの話を詳しく聞くたびにだんだんと、その輪郭を明確にしていく。
胸騒ぎがして、ローに声をかけると、彼はちらりとこちらに視線を向けた。
「幸せになれる薬」なんて名前、胡散臭いことこの上ない。その薬の正体は定かではないが、恐らくは＿＿
「麻薬、だよね」
「だろうな」
ローの返事に、Aは顔をしかめる。その海賊たちが、金儲けのために薬を島に密輸しているところまでは想像がつく。
島の状況がよくわからないので何とも言えないが、誰も密輸の規制をしないのはどういう事なんだろう。聞けばシノの住む区画では、そんな堕落した大人たちが溢れかえっているという。
薬が蔓延しているのは火を見るよりも明らかなのに、何故島の人間たちは動かないのか。
「A！ Aは作れないのか？ 『幸せになれる薬』を！」
「え？」
シノは縋るような目でAを見つめて顔を寄せてきた。
たくさん泣いて、目の周りを真っ赤にしながら、瞳を潤ませて、それでももう泣くまいと唇を強く結んでいる。
「ベポに聞いた！ Aは薬を作れるんだろ？ じゃあ、Aも、その『幸せになれる薬』作ってくれよ！ お願いだよ…！」
Aは、何も知らない無垢な少年を見つめて、胸が締め付けられる。
そして、小さくため息をついて、シノの傍にしゃがみこんでから肩を強くつかんで、強く彼の瞳を見つめた。
「いい？ シノくん、よく覚えておきなさい。この世に万能薬なんてないの。絶対に病気を治せる薬も、どんな人も必ず元気になる薬も、『幸せになれる薬』も、世界中どこを探したって見つからない」
「っ、なんでだ！？ 俺見たよ！ 父ちゃんだって使ってる！ あいつらも言ってたんだ、あの薬は、使えば誰でも幸せになれるんだって…！」
「じゃあその薬で、シノくんのお父さんは幸せになった？ その薬を飲んでも幸せじゃないから、薬に頼らなきゃいけないんでしょう？ 少しの間だけ快楽を感じることを、幸せとは言わないの」
これは説教のようなものだ。強い口調で言わなければいけない。だけどAの言葉を聞くたびに、悲しそうな顔をしていくシノの顔を見るのは、言いようもなく辛く苦しかった。
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弥生(プロフ) - ももりーのさん» CV神谷浩史です笑 (2020年12月11日 18時) (
レス) id: 02a09e0452 (このIDを非表示/違反報告)
ももりーの(プロフ) - 唐突なローランドにわらいました笑笑 (2020年12月10日 0時) (レス) id: 20ef572ecd (このIDを非表示/違反報告)
弥生(プロフ) - 桃さん» コメントありがとうございます！あまりお待たせしないように頑張ります！！ (2020年12月7日 23時) (レス) id: 02a09e0452 (このIDを非表示/違反報告)
桃(プロフ) - 毎日更新楽しみにしてます！新しく連載された方も読みました！どちらもお気に入り登録して楽しみに待ってます！！頑張ってください！ (2020年12月6日 14時) (レス) id: fd04f6af33 (このIDを非表示/違反報告)
弥生(プロフ) - めぐちさん» ありがとうございます！とても励みになります！！ (2020年12月2日 16時) (レス) id: 02a09e0452 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：弥生 | 作成日時：2020年11月27日 2時
