二十三話:シノ ページ26
「シノくん、ね。私はAだよ。よろしくね」
「A……うんっ、よろしく!」
こくんっと頷いて、シノはAの顔をつぶらな瞳で見つめた。
…極力、ローのことは視界に入れないようにしているのだろう、やたらとこちらを見つめてくる。
「か、かわいい…!」
「っ、おい…! ふざけんなばかAっ」
思わず口許を手で覆いきゅんきゅんしていると、げしっと肘でつつかれてしまい、あいたっと声を漏らす。
シノはじろっとローを睨み、それからチラチラとベポの方に視線を向けていた。
「あの白くまは、ベポって言うんだよ。それからこっちはロー、トラファルガー・ロー。
私たちの船長なの」
「船長…そいつが?」
シノは訝しげにローを頭のてっぺんからつま先まで見つめて、疑わしそうに呟いた。
思わず苦笑いしてしまうほどに。
「あ? なんか文句でもあるかクソガキ」
「ふんっ、俺はそんな名前じゃない!」
「キャプテン…あんまり強く当たったら可哀相だよ…」
ベポも何とかローを抑えてくれているのだが、やっぱり機嫌は最悪。
シノもまた意地を張ってローに突っかかってしまうものだから、この二人、最高に相性が悪い。
「そーだそーだ! 僕はまだ5歳だぞ!」
「知るか、ここは俺の船だ。今すぐ海に放り投げてやってもいいんだぞ」
「こーら! そんなこと言わないの! んもー、仲良くしてよ…」
はぁ、と大きくため息をつくと、ローは更に機嫌を悪くしていく。仕方ないな、とローの頬を両手で包み込んで顔を自分の方に向け、固く唇を結んだままむすっとしている彼の口の端をくいっと釣り上げた。
「私がシノくんと話すから、最終決定はローがして。それでいいでしょ?」
Aが困ったように笑うと、ローは、ん、とだけ返事をして、長い脚を組んだままソファーに凭れかかった。
「A、この船は何の船なんだ?」
「え? あぁ、私たちはね、海賊なの。ハートの海賊団だよ」
ぴくり、
シノの肩が明らかに揺れた。
少し空気が変わった気がした。
「ハートの? Aも海賊なのか…?」
さっきまでの可愛らしい少年の姿は消え、シノは一気に警戒心をむき出しにして、こちらを睨みつけてきた。
「俺、海賊は嫌いだ」
その言葉に思わず目を見開く。
「…そっか。
まぁ苦手な人が多いよね、海賊なんて」
彼女が少し悲しそうに笑うと、シノはバツが悪そうな顔でAを見つめ、俯いてしまった。
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弥生(プロフ) - ももりーのさん» CV神谷浩史です笑 (2020年12月11日 18時) (レス) id: 02a09e0452 (このIDを非表示/違反報告)
ももりーの(プロフ) - 唐突なローランドにわらいました笑笑 (2020年12月10日 0時) (レス) id: 20ef572ecd (このIDを非表示/違反報告)
弥生(プロフ) - 桃さん» コメントありがとうございます!あまりお待たせしないように頑張ります!! (2020年12月7日 23時) (レス) id: 02a09e0452 (このIDを非表示/違反報告)
桃(プロフ) - 毎日更新楽しみにしてます!新しく連載された方も読みました!どちらもお気に入り登録して楽しみに待ってます!!頑張ってください! (2020年12月6日 14時) (レス) id: fd04f6af33 (このIDを非表示/違反報告)
弥生(プロフ) - めぐちさん» ありがとうございます!とても励みになります!! (2020年12月2日 16時) (レス) id: 02a09e0452 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:弥生 | 作成日時:2020年11月27日 2時