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Aが部屋に向かおうとすると、またヴォルフが部屋から出てきた。
デジャヴを感じながら、彼の手に握られていた先ほどの木のボウルの中が空っぽになっているのを見て、


「おかわり、だそうじゃ」


「ホントっ?」


ヴォルフの言葉を聞くと、嬉しそうに満面の笑みを浮かべながらボウルを受け取ってから、彼女は鼻歌交じりにキッチンへ向かった。
急いで追加のスープをよそい、すぐにヴォルフに渡す。

その後何回かおかわりを繰り返して、鍋の中がすっかり空になるまでに平らげてしまった。
あまりの食べっぷりに驚いて、それと同時に、口にあったようで嬉しい気持ちになり、にやにやと口を緩ませながら洗い物を済ませた。


食器を仕舞い一息つくと、ヴォルフが何処からか昔の服を取り出してきてぽすん、とAの腕に持たせた。
今風呂に入っている少年にこれを持って行けと、そう言いたいのだろう。
案の定、それと似た趣旨のことを彼女に伝えると、リビングの方へと行ってしまった。


彼女が風呂場の籠に服を置いて、リビングに戻ると、ヴォルフは腕を組んで椅子に腰かけていた。その隣にちょこんと座ると、Aは足をプラプラと揺らした。


早く来ないかな、なんて名前なんだろうな、年はいくつだろう。
そんな風にあの少年について色々なことを考える。まるでなにかワクワクすることが始まるみたいで興奮する気持ちを抑えられない。

背格好は自分と似ていたから、おそらく年は近いだろう。
年の近い子供と遊んだり話したりする機会は、ここ数年全然なかったから、Aは随分と浮ついた気分でいた。


風呂から上がった少年がリビングに入ってきた途端に、眼をぱぁっと輝かせて少年の方を見る。すると、少年の方も彼女に気付いたようで目を見開いた。
洞窟で会った時に見た、珀鉛病が進行して白くなった肌は、もうすっかり健康な肌に変わっていてほっと胸をなでおろした。


「サイズは問題なさそうじゃな」


ヴォルフが少年に向かってそう声をかけると、少年は不思議そうに用意した服をぐるりと見まわして、背中を見たり袖の下を見たりと、なんだか落ち着かない様子でそわそわとしていた。


「息子の服じゃ。取っておいてよかったわい。古いもんじゃが、とりあえずは支障なかろう」


少年は唖然として、服とヴォルフとを交互に見ていたが、
すぐにスタスタと2人の座る椅子の方へと歩み寄ってきた。

・→←二話:目を覚ます



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弥生(プロフ) - あ ま ね 。さん» ありがとうございます!頑張ります…!! (2020年12月2日 16時) (レス) id: 02a09e0452 (このIDを非表示/違反報告)
あ ま ね 。(プロフ) - とても面白いです!!更新楽しみにしてます!! (2020年12月1日 6時) (レス) id: 36c644cd03 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:弥生 | 作成日時:2020年10月12日 2時

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