【ONEPIECE】Take Your Hurt【トラファルガー・ロー】 (ページ9)

今日:1 hit、昨日:13 hit、合計:167,632 hit

二話:目を覚ますページ9

鍋のふたを開けると、ぐつぐつと煮えるスープが一気に湯気を吐き出して、熱が顔に直接あたって、Aは思わず目を瞑る。
沸騰した薄茶色の透明なスープの中に、畑で育てた色とりどりの野菜や、町で買ってきた鶏肉が煮えている。
肉や野菜のうまみが染み出たスープを小さな小皿に掬い取って、少し息を吹きかけて冷ましてから、それを口の中に流し込む。

じっくり舌の上で転がして、少し足りないと思った塩味を足すために、ケースから岩塩を一つまみ取って鍋の中に加えた。
そして、鍋の中をお玉で軽くかき混ぜて、煮詰めて、もう一度味を見てから満足そうにうなずいた。

Aは火を止めてから、出来上がったスープを木製のボウルによそって、スプーンと一緒にお盆に乗せると、鍋のふたを閉め、エプロンを外した。

このスープは勿論先ほど出会って拾ってきた、お腹を空かせているであろう少年のためのものである。
あの魚も折角焼いたのに食べられずじまいだっただろうから、相当お腹を空かせているはずだ。

彼女はお盆を持って、キッチンから廊下に出て、あの少年が寝かされている部屋に向かうと、
その扉から誰かが出てきた。

まぁ誰か、といってもこの家に今いるのはAとあの少年と、それから、今しがた部屋から出て来た当人である、家主たるヴォルフだけなのだが。

「あ、ヴォルフさん。ご飯出来たよ。
あの子起きた？」

「いいや、まだじゃ。じゃがもうすぐ起きるじゃろう」

お盆を彼に渡すと、軽くお礼を言われて、彼女は満足げに頷くと、足取りを軽くしてヴォルフに頼まれた為、風呂を沸かしに向かった。

それにしても、さっきドタンっと大きな音がしたけど、何かあったのだろうか。
首を傾げて様子を見に行こうか迷ったが、彼なら大丈夫だろう。

発明家でもあるヴォルフが作った風呂を沸かす機械にスイッチを入れると、数分のうちに、浴槽に溜めた水がお湯に変わった。
これの試作品の「一号」は今家の中にあるのだが、まぁ随分と残念な失敗作だったと記憶している。確か、「どこでも温泉くん」とかいうふざけた名前だったっけ、と思い出して苦笑を零す。

この完成品も、誰かがこうやって傍で見ていないと、どんな不具合を起こすかわかったもんじゃない。のでちゃんと様子を見てからしっかりとスイッチを切る。

お湯の中に手を突っ込んで湯加減を見て、いい塩梅に温まっているので、浴槽にふたをしてから浴室を出て手を洗い、水気をタオルで拭き取った。