【ONEPIECE】Take Your Hurt【トラファルガー・ロー】 (ページ5)

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「あ、でも私今食べ物持ってない…」

Aはハッとして唇に手を当てる。
そして、申し訳なさそうに指で頬を掻いて、ごめんと呟いた。

「ったく、ホントに何なんだよお前…」

先ほどとは打って変わって、少年は呆れた顔で彼女を見つめ、はぁ、と大きくため息をついた。
危険な様子は見受けられないと判断したのか、少年は手に持っていたメスをポーチに仕舞った。それから同じポーチから糸を取り出すと、徐に立ち上がり、入り口の地面に転がっていた木の枝を拾い上げて、Aが貸した手袋を口に咥えて外すと、器用に木の枝の先に糸を括り付けた。

そして、首を傾げる彼女を一瞥して、彼は洞窟の外へと向かった。
Aが慌てて彼の後を追いかけてみれば、彼は手袋を外し、何やら地面の土を掘り返していた。

「なにしてるの？…って、うひゃあっ！！」

上からのぞき込むと、彼は土の中からミミズを引っこ抜いていて、
Aは驚いて飛び退いた。
その反応を見た少年はにやりと口角を上げて、彼女の目の前にミミズをちらつかせる。

「要るか？」

「も、もー…吃驚しただけだから、そんなの押し付けられたってビビらないよ…」

そう言ってもう一度少年の傍に寄っていくと、彼はつまらなさそうにふーんと鼻を鳴らして、もう一匹だけ捕まえ、それをすばやく先ほどの糸の先に括り付けた。
木に括り付けられた糸の先でうねるミミズ。どうやら彼は即席の釣竿を作っていたようだ。

彼はその釣竿をもってすぐ傍の崖まで向かうと、そこから海へ糸を垂らした。
彼女もまた彼の隣まで小走りに近寄っていき、その隣に腰かけた。
何も話はしなかったが、不思議と居心地は悪くなかった。

数分待っていると、少年の持っていた竿がピクリと反応して、彼は思い切りそれを引き上げた。糸の先を見れば、見事に大振りの魚が一匹、ミミズに喰らいついていて、Aは思わず感嘆の声をあげ、小さく拍手するように手を叩いた。

まんざらでもなさそうな少年は、得意げに笑って、もう一匹のミミズで、先ほどよりも早い時間でまた魚を釣り上げて見せた。
彼女は先刻と同じように目を輝かせて彼を称賛するように手を叩いた。

その二匹の魚を掴んで立ち上がった少年を追いかけて、彼女は洞窟の中へと戻っていった。

少年が洞窟の中に置いてあった空の樽の上に魚を乗せると、まだぴちぴちと動いていてその新鮮さが見て取れる。