【ONEPIECE】Take Your Hurt【トラファルガー・ロー】 (ページ30)

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五話:家族ページ30

ローが使っていた部屋にベポも一緒に寝ることになった。
ローはベッドに、ベポは床に敷いた布団で眠る。Aは女の子な上に、彼女の部屋中薬に関しての本や資料やメモ書き、調合に使う道具などでごった返しているので、一緒に眠るスペースなんてものはありはしない。

というわけで野郎二人は一緒の部屋に押し込められているわけだ。

風呂から出て髪の毛を乾かし、仕舞い湯に入りに行ったAにおやすみ、と告げて、二人は部屋で床に就いた。

電気を消すと、窓の外から漏れてくる月明かりがぼんやりと部屋の中を照らした。
暫くすると、ベポが、なあ、と話しかけてきた。

「どうしてローさんは、こんなに親切にしてくれるんだ？」

親切にする理由。

＿＿そんなもの俺にだってわからない。

「ただの気まぐれだ」

ベポは納得したのか何なのか、すぐにすうすうと寝息を立て始めた。

確かに自分らしくはないと思う。見ず知らずの奴に優しくするほどできた人間じゃないことは理解していた。Aのような、優しさの塊みたいな人間になるには、ローにはいろいろなことがありすぎた。

強いて言うならば、ベポに話してくれた家族の話に興味を持ったんだろう、とそう思った。

今でも彼は家族のことを考える。家族とは何なのか。
医学を教えてくれた両親、珀鉛病に苦しみながらも笑っていたラミ。当たり前のことだけれど彼にも家族はいたのだ。

当たり前？それは違う。当たり前のことなど、この世になに一つだってないのだ。
だって彼の家族はもういない。みんな死んでしまったから。

絶望に苛まれたローに、そんなことを考える余裕はなくなってしまった。
でも彼は今再び「家族」が何たるかに思考を巡らしている。

戸惑ってしまうのだ。ヴォルフやAの厚意に、ベポを助けてしまった自分に。
あんなことがあった今でも、もう一度人を信じたいと思ってしまっているらしい。

それは紛れもなく恩人たるコラソンのおかげだ。彼が自分の命を犠牲にしてまでローを救おうと必死になってくれた姿のおかげだ。惜しげもなく彼が与えてくれた愛情のおかげなのだ。

＿＿俺にとって、コラさんは何だったんだろう？

血のつながりはない。一緒にいた時間だって長くない。
それでもローとコラソンは確かに家族だった。
言葉にしなくても伝わるくらいの「愛してる」が二人の間にはあった。

＿＿俺はまた、誰かを「愛してる」と思えるのかな。

　