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見れば、ローの服の裾を、白くまがキュッと握っていた。
立ち上がると自分より少し大きいそのクマは、でかい図体のわりに弱々しい瞳でローを見つめる。


「なんだよ」


めんどくせェな、と言いたげな顔で振り向くと、白くまはしどろもどろな口調で話し始める。


「あの、助けてくれてありがとう…俺、怖くて…なんも抵抗できなくて……」

「別に。あいつらが絡んできたから、返り討ちにしただけだ。お前を助けたわけじゃねェよ」


「それでも!」


さっさと振り払って先へ行こうとすると、白くまは、今度はさらに力強くローの服を掴んで、叫ぶように口火を切った。


「それでも、すげぇ、俺、嬉しかったから…!」


そして今度は服を掴んだまま泣き出してしまった。

__めんどくせェ…。


えぐえぐと嗚咽を零しながらも、ローの服はがっしりと掴んで離さない。暫くその状態でいたが、流石に面倒になったのか、ローは仕方なく近くの洞窟にまで白くまを連れて行き、話しを聞くことにした。


「お前、なんでやり返さなかったんだよ。白くまだろ? あんな連中に、力で負けたりしねェだろ」

地面に胡坐をかいて座りガシガシと襟足辺りを掻くと、白くまは俯いたままちょこんと正座して一言、


「あいつら、話しかけてきてくれたんだ」

「…それで?」

「友達になれるかもしれないって、思ったんだ」


その言葉にローは思わずため息を零す。


「お前殴られながらそんなこと考えてたのか?」

「うん…抵抗しないで大人しくしてれば、仲良くできるかもって、そう思って」


ローは呆れて、唖然と白くまを見つめた。
どうしたら自分をいじめる人間と友達になれるなんて思うのか。


友達、とはずいぶん久しく聞いていない言葉だ。

自分にはもうそのような存在はいない、と急に沈んだ気分になる。
ローは、火の海に取り残されて、生きたまま焼き殺された家族や教会の仲間のことを思い出す。あれは確かに、居心地のいい存在だった。


年は近いが、Aを友達と呼ぶにはまだ過ごした時間が短すぎる。
自分にとって彼女は、他とは違う存在であるのは確かだ、けれどそれが「友達」かと問われれば答えに戸惑うのも事実だった。

自分の境遇はほとんど話してしまったのに、彼女の「父親」についてはわからずじまい。あの後それとなく尋ねてみたが、彼女は困ったように笑うだけだった。


__考えてみれば、この白くまは、なぜこんなところに一人でいたんだろうか。

・→←四話:ベポ



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弥生(プロフ) - あ ま ね 。さん» ありがとうございます!頑張ります…!! (2020年12月2日 16時) (レス) id: 02a09e0452 (このIDを非表示/違反報告)
あ ま ね 。(プロフ) - とても面白いです!!更新楽しみにしてます!! (2020年12月1日 6時) (レス) id: 36c644cd03 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:弥生 | 作成日時:2020年10月12日 2時

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