【ONEPIECE】Take Your Hurt【トラファルガー・ロー】 (ページ3)

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先ほど豪快に顔面から雪に突っ込んだ所為で鼻が冷たい。
その為か少し嗅覚が鈍くなっており、少年の匂いを辿るのに苦労したが、やっとの思いで、海岸まで来た。

しかし海岸では潮の匂いが強く、少年がどこへ行ったかはわからない。
それにしても、この時期の海は、森の中よりも冷え込む。
遮る障害物がないから凍てつく風が直接吹き込んできて随分寒い。

こんな中にあんな寒い格好で居たら病気でなくとも、普通の人間には堪えるだろう。

「(そう言えば、この近くに洞窟があったっけ)」

あそこなら、寒さをしのげるし、森の中に潜んでいる獣たちに襲われることもない。
少女は急いで洞窟の方へと向かった。
走った所為でか、少し体が熱を帯びてきて、汗ばんできた。

洞窟の入り口に着くと、岩の地面には大小さまざまな木の枝が散らばっていて、雪は入り口付近には入り込んできていなかった。
少女は暗い洞窟の中を見つめ、深呼吸の後、ゆっくりと洞窟の中へ踏み込んだ。

すると、少し進んだ先に、彼はいた。

彼女を見据えると、眼を大きく見開き、唖然として口をポカンと開ける。
そしてすぐにその濃い隈を蓄えた三白眼を釣り上げて、彼女を睨みつけた。

「お前ッ…さっきの……！」

少年は浅く短い呼吸を繰り返し、警戒を強めて、ジリ、と少し後ずさる。
彼の声が洞窟の中に木霊し、少女には少年の手に握られた医療用のメスの刃が向けられていた。
怯えた眼だ。町で女性に聞いた通りだった。
肌が白くなる症状、誰がどう見たって、件の珀鉛病だろう。

少しその場に固まっていた少女だったが、
ふう、と一つ息をついてから、出来るだけ柔らかい声色で話しかけた。

「君、大丈夫？」

「っへ…」

間の抜けた声が少年の口から零れて、予想外の少女の言葉に面食らった彼は目を丸くする。
珀鉛病とは、感染症だと"思い込まれている"病気だ。
それ故に彼は、多くの人から迫害を受けた。たった一人を除いて、自分のことを心配してくれた人などいない。彼の肌を見るや否や、まるで化け物でも見たかのような顔をして、自分を遠ざけ迫害する人間しかいなかった。

だからこそ、目の前の少女が怯えて逃げ出さないのが不思議でならなかった。
子供だから珀鉛病のことを知らないのか、洞窟内で薄暗いから顔が良く見えないのか。
どちらにせよ、町で見かけた自分を追いかけてきてまで、自分を心配してくれた少女は、随分と稀有な人物に見えて、いつの間にかメスを下ろしていた。