【ONEPIECE】Take Your Hurt【トラファルガー・ロー】 (ページ16)

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三話:薬師ページ16

Aに勝手を教えられながら、ローは新しい家での生活に順応していった。
掃除や洗濯、畑の手伝い、研究の手伝いに加え、料理も教えられた。
料理に関しては、あまり上達することはなかったが。

Aは、齢12にしていろいろなことを知っていた。
生活に必要な知識や技術に加え、多様な言語や学問、音楽や芸術のこと、

極めつけは、

「おい、何してんだ？」

朝、畑仕事を終えてから、手分けして家の掃除を済ませたり、洗濯物を干したりと家事を済ませてから、余った時間を、用意された自室で本を読みふけってすごしていたある日のことだった。段々とここでの生活にも慣れて、年の近い異性という、思春期間近のローには少し緊張の種になりそうな彼女との距離感にも、少しずつだが慣れてきていたころ。

部屋に籠りすぎていたので、気分転換に外に出てみると、Aは、白昼堂々、外で火を起こし、普通よりもごつい鍋で何かを作っていた。
蓋は固く閉められ、蓋についた黒い取っ手がカタカタと揺れ、隙間から漏れる蒸気がピィーっと音を立てている。
この前見せてもらった、料理に使う圧力鍋のような見た目だが、それにしては随分本格的で、ごちゃごちゃしたものだった。

「あ、ロー。どうしたの？」

「いや、身体が鈍るといけねェから、外に出て来ただけだが……
それ、なんなんだ？」

Aがしゃがみこんで火の世話をしている横に、同じようにしゃがむと、彼女は鍋から目を離さないままでちょっとね、と呟いた。
妙に曖昧に逸らす彼女に、話せないようなことでもしているのかと怪訝な目で見つめる。彼女の焦げ茶色の瞳は、炎を映し出して赤く揺れている。真剣な顔つきと相まって、幼いながらも何処か神秘的に見えるその横顔に、ローはごくりと生唾を飲み込んだ。

「よしっ」

彼女は勢い良く立ち上がって、鍋掴みを手にはめると、鍋を持ち上げて傍に置いてあった台の上に乗せた。
急に立ちあがった所為でくらりと眩暈を感じた彼女は目元を抑えて少し固まっていたが、すぐにぱんぱんっと頬を叩き火の後始末をし始めた。

一体何をしているのか、ともう一度尋ねてみたが、彼女は含みのある笑顔を浮かべて何も言わずに、燃やし終えた薪を炭置き場に持って行ってしまった。

ふと台に置かれた鍋に目をやる。
一体何が入っているのか。気になって傍に近寄ってみたがよく分からない。
今日の晩飯の凝った準備だろうか、と鍋に顔を近づけて匂いを嗅ごうとした時だった。

「こら！」