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もうすっかり警戒心を解いた少年は、ちょこんと椅子に座って、Aとヴォルフに向かい合った。洞窟で出会った時の警戒心丸出しの彼とは打って変わって、こちら側を物珍しげに見つめている。
あの時には白いもこもこの帽子を被っていたため顔が良く見えなかったが、帽子を取ってみれば年相応のあどけなさが残った少年で、少々目元にある隈が気になるのを除けば、可愛らしい顔立ちをしていた。
「あのよ」
しばらくの間の後にすう、と大袈裟に息を吸ってから少年はそう切り出した。
「なんじゃ」
「もしかして、あんたら、俺を助けてくれたのか」
少し控えめに尋ねてくるということは、さっきまで警戒していたことに少なからず罪悪感を感じているのだろう。ヴォルフは腕を組んだまま上から見下ろすように少年を見て、Aの頭をわっしゃわっしゃと撫でまわしながらぶっきらぼうに口を開いた。
「ふんっ、こいつの帰りが遅いと思って町に寄ってみれば、洞窟からでかい悲鳴が聞こえてきおる。気になって見に行ってみれば、こいつがいて、ボロボロのガキが一人倒れておった。
そのまま死なれたんじゃ流石にこっちの寝覚めが悪いからのう。連れ帰ってベッドに寝かせてやっただけのことじゃ」
「そうか……」
Aが、少し乱れた髪の毛を直していると、少年は何か考え込んだように俯いていたが、キュッと唇を結んでからもう一度こちらに顔を向けた。
「まぁ、助けてくれたことには感謝してやるよ」
「かっ! どこまでも可愛げのないガキじゃ!
坊主、世の中はギブアンドテイク、お前はワシらに一つ借りができた。それはわかるな」
ヴォルフの言葉に少年は相槌を打ち、彼はそれを見るとまた続けた。
「だったらお前の事を話せ。それでこの貸しはチャラにしてやるわい。
…こんな季節に子供が洞窟で倒れとるなんて、何か事情があるんじゃろう」
少年は少し考えこんでから頷いて、軽く深呼吸をして一つ一つ自分の境遇を話し始めた。
彼は、珀鉛病の蔓延により滅ぼされてしまった国、「白い町」フレバンス出身だという。
だから彼も珀鉛病を患っていたのか、と納得がいった。
皮肉なことに、彼の両親は国一番の医者だったのだそう。珀鉛病が流行する前まで、少年は両親から医学を学んでいたそうで、多少なりと医学の心得はある、と。洞窟で見たあの手術も、両親から教わったのだろう。この幼さでメスを握る姿は、一人前の医者のそれだった。
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弥生(プロフ) - あ ま ね 。さん» ありがとうございます!頑張ります…!! (2020年12月2日 16時) (レス) id: 02a09e0452 (このIDを非表示/違反報告)
あ ま ね 。(プロフ) - とても面白いです!!更新楽しみにしてます!! (2020年12月1日 6時) (レス) id: 36c644cd03 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:弥生 | 作成日時:2020年10月12日 2時