[オリジナル]別れの時まで[恋愛] (ページ9)

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第8話ページ9

「そんなことがあったのねー」

次の日、田儀に昨日のことを聞かれた。

「そうだよ…本当最悪」
最悪のバレンタインだった。

「このままでいいの？」
「よくないけど…」

それでも、どうすればいいかなんてAにはわからなかった。

数日後

帰り道で偶然、悠たちを見つけてしまった。

慌てて死角に入り込み、あちらに聞き耳をたてる。

「嘘だろ悠～伊取とケンカしたのかよ～」

どうやら、Aの話をしているらしい。

しかも昨日の事が話題に上っている。

「お前ら夫婦かよ！ってくらい仲良かったのになあ」

「だよなあ！」

住宅街に男子の笑い声が響く。

「うっせーなお前ら。そんなんじゃねーよ」

悠が呆れたようにそう言った。

「だいたいお前ら昔からそれしか言えないのか」
「だってそれしか悠くんのからかいどころがないんだもんっ」

ひとりの男子がわざと裏声でそう叫ぶ。

その瞬間、Aはふと気づいた。

Aと悠の関係について、からかわれているのはAだけではない。

悠も、昔から散々言われてきたはずだ。

それでも私たちは、ずっとずっと幼なじみだった。

確かに悠の事は好きだ。でもそれ以前に、幼なじみだった。

かけがえのない、私の家族だった。

なんでそんなことに、今更気づいたんだろう。

本当の気持ちを伝えないと、まだ行けない。

その日の夜｡

電車に乗って塾に行った帰り道、Aは不良に囲まれていた。

｢ねぇ君､なんて名前～?｣

｢その制服、雪中のだよね？そんなとおーいとこから何しに来たの？｣

こんな奴らと話してる暇なんてない。

さっさと帰らなきゃ。

そう思ってはいるのだが、男達に周りを囲まれて身動きが取れない。

一応空手は習っているが、そもそも男の力になんて絶対に勝てないし、まず怪我されたらこっちの責任になる。

結論｡

相手は酒臭いし､ほっといたらどっか行くだろ。

それまでの辛抱だ。