[オリジナル]別れの時まで[恋愛] (ページ21)

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第20話ページ21

遂に明日、悠が出発する。

そこまで追い詰められていながら、私はまだ自分の気持ちを告げられていない。

今日こそは、と心に決めて病室のドアを開ける。

「悠、準備おわった？」

「･･･ノックくらししろよな」

悠はちょうど荷造りが終わったところらしく、カバンのファスナーを閉めていた。

「明日、いつ出発？」

「朝の６時半」

「早いね、起きれるの？」

「起きれるし」

何気ない会話。

こんなことをしに来たわけじゃない。

「あの人さ･･･悠のお母さんなんだよね」

「ん、ああ」

「確かさ、生き別れの家族なんだよね。良かったね会えて」

「･･･そうでもないけどな」

それから、悠は話してくれた。

お母さんがクスリ中毒だったこと。

悠が生まれた時にもクスリを摂取していたこと。

幻覚を起こして悠を傷つけたこと。

「ごめん、聞かない方が良かったね」

「良いんだよ。俺も言ってなかったし」

「･･･じゃあさ、Aの家のことも教えてくれよ」

「え？」

「俺ばっかり話させといて、お前の話はなし？」

多分これも、悠なりの気遣いなんだろう。

本当に優しいんだか優しくないんだか。

「実はね、私にはもう1人兄弟がいたんだ。私が6歳の頃に妊娠してたの」

「その時のことはあまり覚えてないけど、お姉ちゃんになるんだ、ってはしゃいでた気がする」

「その時までは、父さんも母さんも仲が良かったし、家にいることも多かった」

「事故だった。プロパンガスの爆発に巻き込まれて、母さんとお腹の子は10mも吹き飛ばされた」

「母さんは父さんの病院に搬送されてきた。その時はまだましな設備だったから。ひどい状態で、お腹の子供と母さんどちらかを見捨てなきゃいけなかった。･･･父さんは母さんを選んだ」

「母さんは父さんを恨んだ。なんで私を助けたの、なんで私だけ、って叫んでた。その時からわたしの家族は少しずつおかしくなった」

「父さんはほとんど家に帰らなくなった。母さんは、ぼーっとしたりすることが増えて、急に泣き出したりしてた」

「家事は看護師の人とかも手伝ってくれたけど、私は幼稚園に行きながら家のこともしてて･･･それで、疲れてた」

『何でお母さんはそんなんなっちゃったの、お母さんなんかいらない』

「あれは絶対に行っちゃいけなかった。あの一言が母さんを突き落としたんだ」

「次の日から、母さんは部屋に篭もりきりになった」

「２週間後、母さんは身を投げた」