[オリジナル]別れの時まで[恋愛] (ページ18)

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第17話ページ18

「やめたんだね、タバコ」

「ああ」

母さんが死んでから、父さんはタバコをやめた。
罪滅ぼしのつもりなのかもしれないけど、そんなことをしたって母さんは帰ってこない。

『お母さんが死んだのは、お父さんのせいだ』

1度だけそういったことがある。

その時の父さんは、怒ったような、悲しいようなどちらともつかない顔をして、ただ一言『すまない』と呟いた。

今となれば、あの時の私のセリフは思い上がりの勘違いだと言っていいだろう。

母さんを殺した･･････あの時の母さんは生きているのか死んでいるのか分からないくらいだったけれど
、とにかく最後に母さんの背中を押したのは私なんだ。

私と、父さんが母さんを殺したんだ。

「A」

突然父さんが私の名前を呼んだ。

「何？」

そう言えば、こうやってゆっくり二人で会話するなんて何時ぶりだろう。

私たち家族の関係は、確実に母さんが死んだ十年前
から狂い始めている。

でも、どうしても父さんを許すことはまだできない。

「悠君のことなんだが、あの子は･･････」

父さんが悠のことを名前で呼ぶことはほとんど無い。
あるとしたら、悠を患者として扱う時くらいだ。

「悠、アメリカに行くんだよね。本人から聞いたよ」

「彼がそんなことを言っていたのか？」

「そうだけど」

どうして父さんは悠がアメリカに行くことを疑うようなことを言うのか私によくわからなかった。

悠が一応保護者代理である父さんに何も言わずにアメリカ行きを決めるなんてありえない。

「本当はいうなといわれてたんだがな。あの子はなかなか頑固な所があるから」

父さんは相変わらず前を向いたまま話している。
だけど、私はなぜか父さんの声があの時に似ていると思った。

「あの子はもう長くない。おそらく次の春は迎えられないだろう」

あの時と同じ声だった。

そして、私は今更になって、あの時の父さんの気持ちに気づくことが出来た。

十年前父さんは、母さんを守れなかったことを後悔し、自分に対し不甲斐なさを感じていたのだろう。

そして今、私は父さんのことが憎い。

悠のことが憎いよ。

「どうして私に教えてくれなかったの」

「私って、そんなに頼りない･･････それとも教えたらあちこち言いふらしそう･･････」

「ずっと一緒にいたのに、なんで私だけ気づかないの」

悠、今はあんたが嫌いだよ。

何でこんな涙が出るの。