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「でもな、やっぱり中て射になるのはやめたほうがいい。」
「…そうですよね。」
勝ちにこだわってまで、射を崩した自分が情けなくなってきた。
落ち込んでいると、頭にぽん、と手を置かれる。
「わぁっ。」
「とりあえず今は腕の怪我を治せ！それからはみんなとがんばろうな。模擬試合楽しかっただろう？」
「はい……。」
優しく頭を撫でてくれるマサさんに涙が出そうになった。腕の痛みが涙腺を緩めてるのかもしれない。
手を抜き始めていた私が情けない。
「マサさん！！」
小野木の声がする。
「リターンマッチだ！」
振り向いたら、涙が出そうなのがバレてしまう。どうしようかと、思うとマサさんが私の耳元へ顔を寄せた。
「落ち着くまで、更衣室にいていい。」
「っ、は、はい。」
「残念、森岡先生がまた腰を痛めてしばらく再起不能だ。」
「滝川さんが代わりになればいいんじゃないんですか。」
マサさんのがやんわりと私の背中を押す。
「Aを休めさせたいからリターンマッチはなし。…ほら、更衣室にいって腕を冷やすんだ。」
そう言われ、私は駆け足で射場から出る。
更衣室の扉をしめるとずるずると扉を背に崩れ落ちる。
ぽろり
雫が袴に落ちて、流れていく。
「な、んなの、これ……。」
金属で叩きつけられるような衝撃。
深呼吸をすると思い出す。伏せられた長い睫毛、目の前に迫る浮き出た鎖骨、口と同時に動く男の人特有の喉仏。
なにより、
『落ち着くまで、更衣室にいていい。』
脳を痺れさすような、湿りを帯びた低い声。
顔が、じんじんと熱い。
「…意味、分かんない…。」
胸を突き上げるように零れた涙は1つだけ。さっきまでの悔しさでの気持ちはなく、ただ…
__変なところに魅せられた自分が恥ずかしい。
膝に顔を埋める。…本当に、私は、何を考えてたのか。
ざわざわと木が揺れるような、不安定な気持ち。知らない気持ち。
しばらくそのままでいると、背後の扉が開いた。支えていたものがなくなり、気がつくと私を覗く顔…よかった、静弥くんだ。
「うわ、急に開けないでよ！」
「…何回も声をかけたんだよ。それより…」
静弥くんの顔が目の前にある。
「顔、赤い。さっき滝川さんに何かされたの？」
「されてない！何でもないから！」
急いで更衣室から出る。冷ましきれない熱には諦めて。
「やっぱり、僕じゃダメなんだ。」
この時ばかりは、私はその声に気づかなかった。
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ぴぴるぴー(プロフ) - 番犬ｽﾞはこれからも活躍をしてもらいます(笑)文に関しては雑にならないようにしていたので綺麗と言われて安心しました…！ありがとうございます（*^^*） (2018年12月24日 13時) (
レス) id: cd72a96e39 (このIDを非表示/違反報告)
深海(プロフ) - 綺麗な文章で読んでいて気持ちいいです！番犬最高。これからも応援しています。 (2018年12月24日 0時) (レス) id: af3085a075 (このIDを非表示/違反報告)
ぴぴるぴー(プロフ) - ありがとうございます！主人公には私が弓道で注意していることをそのままやってもらってます(笑)。更新忘れないように頑張ります〜！ (2018年12月1日 21時) (レス) id: cd72a96e39 (このIDを非表示/違反報告)
四郎(プロフ) - 私も今部活で弓道をしているので、主人公の凄さっぷりがよく分かります！！的中連発とかいつかしてみてぇ…。更新頑張ってください！！ (2018年12月1日 2時) (レス) id: 6e9081cabc (このIDを非表示/違反報告)
ぴぴるぴー(プロフ) - そう言ってもらえてとても嬉しいです(´･･`)張り切りすぎて画面割らないように気をつけます！ (2018年11月26日 1時) (レス) id: cd72a96e39 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ぴぴるぴー | 作成日時：2018年11月19日 1時
