おばけなんてこわくないさ (ページ5)

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帰り道）Ｓ※ＩＦの話ページ5

それはある日の夕方だった

学生はサークルやバイト、遊びに行ったりする時間に私は直行で家へと帰っていく途中。

帰り道にはサラリーマンや商売やらで人が混みあっていて、ホームは丁度帰宅ラッシュの時間帯。
私はいつもこの時間に帰っているので慣れているが、隣の大きな男は周囲の人間に押されて眉間にしわを寄せていた

　だから言ったじゃないの

　ここまでとは思わなかったんだよ

声をかけると頭上から何とも苦しそうな顔をしたサムが言う。
彼はとても身長が高いので、私としては目印としていてくれるだけで進行方向がわかっていいのだ

Aは大丈夫？

　もう慣れたから平気よ。私よりいつも車で通学しているサムの方が心配ね、少し休む？

　まさか、全然平気さ

おぼっちゃまのサムは普段車で通学している。
私が電車通学していると聞いて、サムは好奇心が働いたのか付いていきたいと言い出したのが事の八端だった。まさかこんなにも人酔いが酷いなんて聞いていない、彼の辛そうな顔を見るだけで連れて来なければ良かったと後悔した

　ほら、サム。次の電車を乗ればホームのミッションはクリアよ

　何それ、ゲーム感覚みたいで楽しそうだね

私の言い換えにサムはくすりと笑った。

　さあ、目的地まであと少しよ。頑張りましょう

そう言って、少しでも安らげる様にサムの手を握った。彼が歩きやすい様に手を引いて電車に乗り込む。
これでは何だか介護の様だと思った自分に、サムと同じ様に私も笑った

それから２、３駅乗り換えをした後に電車を降りた。
ホームの出口へ向かうと先程の人混みが嘘のように等間隔で人が行き来をしている光景が目に入った
私はホッとし、サムを見やると彼は大きく伸びをしていた

　やっと空気が吸える

それは大型犬が緊張状態から解けた後のそれだった。
例えるならば、見知らぬ人間につつくりまわされた後のようなかんじ

伸びた終えた後、こちら側に駆け寄り再度手を繋がれた

　やっぱり人が多いところは息苦しいね

無邪気な顔でそう言ったサムは、少し照れくさそうだった

　よく頑張ったわ、サム

犬を誉める様にわしゃわしゃと繋がれていない手でサムの頭を撫でまわした

　ちょ、ちょっとAっ！危ないよ

私も何が面白い訳でもないのに、自然と笑みがこぼれた

私達は、二人してしばらく笑い合っていた
　
　

　