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目を閉じていた。

開けたく、なかった。

「……A、起きてるんだろ」

目を開くと、涙が頬を伝った。

「……泣いてるのか」

頬を撫でられる。
体を起こそうとすると、ガチャ、と金属の音がした。

……拘束されている。

「……ああ、逃げようとしても意味は無いぞ」

途端に冷めたような声で涼星が言う。

「……別に逃げるつもりは無いよ」
「……どうだか」

……どこから、歪んだのか。
優しい手が、そっと私の額を撫でる。

私は目を閉じた。

随分信用を失ってしまった。
まあしょうがないのだけど。怖いものは怖いから抵抗しないなんて難しい。

「……両足の腱を切る」

今も思わず身をよじってしまい、鎖が音を立てる。

「……ほら、また逃げようとする」

そして、今初めて部屋に何があるか気づいた。
……おそらく拷問器具。

「安心しろ、他のことはしないから」

唇が、歪に弧を描く。

「お前が大人しくしてればな」
「……涼星」
「なんだ?」

私はゆっくりと、息を吐いた。

「……抱きしめて」

彼は一瞬驚いたような顔をしたあと、柔らかく微笑んだ。

そっと背中に腕が回される。
温かい。

「……切って、いいよ。元々覚悟して提案したんだし」
「痛いぞ」
「なんで脅すの。覚悟が揺らぐだろ」

思わず笑うと、背中に回された腕に、再度力が込められた。

「ありがとう」

私の身体が震えているのが分かったのか、安心させるように背中をさすられた。

だったらやるなよ、と思うが不安なのだろう。
……この先もこういう事があるかもしれないな。
いつまで生きていられるか。

まるで他人事のように考えた。

「じゃあ、切ろうか」

35 ※やや注意→←33



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ほっ - え、今更新中止しますか!?めっっっっちゃいいところだったのに!?? (2022年3月6日 13時) (レス) @page49 id: a5ff14c25a (このIDを非表示/違反報告)
冷兎 - あ”ぁ”ぁ…っ、ちょ、いいところっ……!!今!いいところぉっ……… (2021年7月31日 2時) (レス) id: 3cae246b7c (このIDを非表示/違反報告)
あま - 一番気になるところで… 更新待ってます!!! (2020年6月20日 23時) (レス) id: 621034dbe1 (このIDを非表示/違反報告)
- 今、更新停止中ですね。 (2020年2月19日 17時) (レス) id: a614cebea9 (このIDを非表示/違反報告)
NZM(プロフ) - 更新楽しみにしてます…!吸血鬼様良き… (2019年11月22日 16時) (レス) id: 13f970b2f4 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:タケノン | 作者ホームページ:http  
作成日時:2018年1月4日 0時

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