俺たちの赤 (ページ8)

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深い夜の一部_2 ページ8

「水を置きに来ただけだったんだけどな。汗、勝手に拭いたわ」
「そんな悪いことしたみたいな言い方しなくても」

水を受け取りつつ、そう返す。
恐らく彼や、彼らは、俺がうなされている事を知っている上で、気も使ってくれている。
それもこちらが不快にならないように。

「優しいよな、ローレン」
「もちろんもちろん、いつだって俺は優しいに決まってんだから」
「優しいついでに、一緒に寝ない？」
「…は？」

なんて言った？と言いたいような顔を向けるローレンの返事を待たずに、
ベットの奥に移動して、スペースを開ける。
広いベットだなとは思っていたけれど、余裕で2人が寝れるスペースがある。
はよ入れと言わんばかりに、トントンとベッドの空いたスペースを叩いて、固まったローレンを促す。

彼が俺に気を遣ってくれているのは知っているけれど、
それと同時に、彼のベッドを奪っている間、
彼がリビングのソファで寝ていることだって俺は知っている。
知っているというか、まぁ、だるまに聞いたんだけれども。

「あー、Aさん？何言って、」
「はよ」
「ハイ。いや、じゃなくて」

ソファで何日も寝ていて、身体が休まる訳がない。
俺にはわからないように、言わないようにとしていたみたいだけれど
時々、つい固まった身体を解す為か動かす仕草や、本当に若干だが目元に出来た隈がある。

ベットに誘うが煮え切らない態度のローレン。
男同士なのだから何を嫌がることがあるのだろうか。
いや男同士だから嫌なのかも知れないけれど。
だがローレンに負けず劣らず、こちらも優しいので追加で大義名分を渡してあげようと思う。

「寝ようとするとうなされて中々眠れないんだけど、
　ローレンが横に居てくれたら、安心して眠れる気がするナァー」
「っ、お前それ、…、棒読みクソわろた…」

驚いてから、呆れた様な顔のローレンが、諦めた様にベッドへと乗る。
やっぱり優しいな、ローレンは。
俺がうなされていることをちゃんと自分で理解していること、
それをローレンに本当は気にしすぎないでほしいこと、
実際本当に俺が人に横にいて欲しいこと。恐らく全てわかってくれた。

まだ知り合って数日間の付き合いだけれど、本当に、彼は優しいのだ。

「…おやすみA」
「おやすみ、ローレン」

あぁでも本当に久々に安心して眠れる気がする。と、ほんの少しだけ感じる彼の体温からそう思って、眠りに着いた。