俺たちの赤 (ページ7)

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深い夜の一部_1 ページ7

物心ついたときには、家にはクズという名の父親しかいなくて。
どんなクズかというと、ただのクズ。
説明不要、ただただクズだった。
そんな父親を母親が見捨てることは恐らく自然の摂理。
ただ俺のことも置いていかれたのは、まだ小さかった自分にとっては抗う事ができない摂理だったけれど。

とある片田舎の小さい家で、殴られるしかない日々は、じぶんの身体にも心にも否応なく傷を刻み込んだ。
父を捨て、故郷を捨て、ロスサントスへと逃げてきた後も、夢にみる。
あの家での日々を。
抜け出せなかったら続いていたであろう日々を。

うなされて目が覚める。それはGOD FAMILYに助けられてからも何回も経験していた。

「っ、は、ぁ」

じわりと汗をかき、目を開ける。

「ろ、れん、？」

誰もいないはずの、貸して眠らせて貰っている部屋。
窓からは光もなく、恐らく感覚的にも夜中。
目を開けると、昼間の下りから仲良くなり、呼び捨てタメ口にまでなった彼が居た。
元は彼の部屋だと聞いているから、居てもおかしくは無いのかもしれないけれど。

「A、大丈夫そ？」

昼間の元気な声と比べて、夜中で周りに配慮してか、静かで、心配と確認が含まれた声色で話しかけてくる。
彼はただ居ただけではなくて、手にタオルをもち、額を拭ってくれていたらしい。
ほんとにどうしてこんなに甲斐甲斐しく優しくしてくれるのか。
ペットだと思われてるからか？と昼間にした会話を思い出したが、今はただその優しさに甘んじる。

「…大丈夫ではあるよ」
「俺の口癖マ？」

そう言って少し笑って、水の入ったボトルを渡してくれる。