同居人。＊yb×in ページ10
＊
俺には、見えないものが見える。
それは、空を彷徨っていたり、
行き交う人を通り抜けて行ったり、
誰かの体に憑りついていたり。
俺も最初はそれらが怖かったが、
いつからか、当たり前の光景になってしまった。
と、いうのも、
周りが「幽霊」「怨霊」と騒いで逃げるものは大抵、
フランクな奴ばっかりだ。
俺の通っていた小学校の渡り廊下はよく、
ポルターガイストで有名だったが、
僕たちとなんら変わらない見た目をした子供の幽霊たちが、
かくれんぼをして遊んでいる最中に起きた音だった。
幼い頃の俺はその光景を目の当たりにして以来、
皆が怖がっていることがおかしくて仕方がなかった。
冒頭部分で憑りつくとか怖いことも書いてはあるけれど、
肩に乗っかったり、足にしがみついたりで、
皆ちょっとした悪戯心で行っている行為だ。
それを俺ら人間が都合のいいようにとらえているだけの問題。
幽霊は意外と、俺たちの存在に近いのだ。
そんな俺が
幽霊の存在を知ってから二十数年、
俺はそこそこ有名な一流企業に就職。
はや社会人生活三年目を迎える今年、
突然の人事異動で神奈川から埼玉へと異動になった俺は、
仕事帰り、整理の付いた段ボールを畳んで片付けていた。
「おーい」
「やっほー」
「…聞こえてないの？」
この部屋に越してきてから間もないが、
同居人がうるさい。
俺が仕事の資料を作っていると後ろからのぞき込んだり、
夜は安眠を妨害しようと、変な音を立てたりする。
「おーい、アラサーのおじさーん」
「金髪豚肉野郎」
「もやし」
そしてコイツは、途中で飽きて、
俺の悪口を言い始める。
声も話すことも、
その辺の小学生の様だった。
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