【短編】白夜鉄道回送録 (ページ7)

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一通り説明を受けて店を出た後、
私たちはアニメ専門ショップに向かった。

せっかく友達をレンタルしたのに、
こんなとこに来るのはもったいない…のかな。

店に入ると、
すぐ目の前に絶賛愛読中のマンガの、
ポップアップ広告が目に入った。

「あ、最新刊出たんだ！」

それは私の声ではなく、
隣にいた、彼の声だった。

「ねぇ、Aはもう読んだ？最新刊」

「え、あ、うん、読んだよ」

「えーまじかぁー」

ネタバラしすんなよー。
彼は私を見て、人差し指を唇に当てる。

その後も、
彼は何の変りもない「友達」を演じてくれた。

私のマニアックな話にもついてきてくれて、
ご飯を食べに行っても好みを分かってくれていて。

良く下調べしたんだなぁ、と感心する反面、
彼にもやもやとした感情を抱いていた。

「…A、どうしたの？」

「え？あぁ、いや…なんでもない」

オムライスを口いっぱいに詰め込んで、
彼はおいしそうにそれを食べる。

その姿が小動物みたいで愛くるしいな、
なんて不覚にも思っている自分がいたことに、
急に気恥ずかしさを感じた。

これが全部作りモノだってことは、分かっている。

私に向ける視線も、
楽しそうなその声も。

この笑顔を、
他の誰かに見せていることは、
頭の中で理解しているはずだった。

それなのに、
それなのに惑わされてしまうのは、
恋愛経験ゼロのマンガオタクだからか。

それとも、
彼のことが好き、だからなのか…？