友達代行業＊Daiki.A ページ6
＊
「あ、森野Aさんですか？」
指定されたカフェで待つこと数分。
"彼"は、私の目の前に現れた。
「有岡大貴です、
今日一日、"友達"としてよろしくお願いします！」
太陽に負けないくらいの笑顔で、
彼は私に微笑んだ。
出会いは、一週間前。
社会人一年目、
特にあてもなく上京してきた私は、
オタクでネクラ、おかげに地味で幸薄そうというレッテルを貼られ、
恋人どころか、友達すらできなかった。
上京するまえまで、つまり学生の頃は似たような仲間を集めて、
グループを作って楽しく過ごしていたが、
何の手違いかアパレル店員になった私は、
群れを形成することもできない。
そんな中、愛用するマンガアプリの隅に、
小さく現れたその広告。
"友達が簡単に作れる！"
今思うといかにも怪しい広告だったが、
その時の私はどうしたことか、
すぐに手続きを取ってしまっていた。
彼が来る前までは、
友達の条件は何でもいいと思っていたけれど…
「森野さんはワンデイプランに申込みいただいたので…」
少しハスキーな声、
それとは反対の可愛らしいルックス。
私にはもったいないほどのイケメンが、
友達としてやってきてしまった。
「…森野さん？」
「あっはい」
「料金のほう、大丈夫でしょうか」
「はい」
私が返事をすると、
彼は納得した様子で机の上に並べた資料をしまった。
「それと、事前登録の際に入力していただいた情報に間違いはないですか？
私たち友達代行業者は情報をもとにお話しさせていただくので」
「あ、大丈夫です」
情報って…
私、「アニメとマンガと声優が好き」って書いたんだっけ…
こんなイケメンが来るなら、もうちょっとまともなこと書いとけばよかったなぁ…
「あと、友達なので、
森野さんの事、「A」と呼ばせてもらいます。
私のことは好きなように読んでもらって構いません」
「わ、かりました」
「それじゃあ、今日一日楽しもうね、
A！」
こんな作り方で、
友達ってできるもの…だったっけ。
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