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「学校ハイジャック計画」を立ててから、早一週間が経った。
この日はまだ朝だというのに、誰かに覆い隠されたように暗かった。
「ごめん、寝坊した」
古びた戸が、がたがたと音を立てて開く。
そこには有岡くんらしきシルエットが、
廊下の光を浴びて、蜃気楼のようにゆらゆら揺れた。
遅せーよ大ちゃん、なんて光くんの声が暗闇から聞こえる。
表情は見えないけど、緊張が空気を振動する感覚が伝わった。
束の間の沈黙でさえも、冷たく感じる。
それはまるで今から起こることを予兆するようだった。
「…大ちゃんは遅れたけど、作戦は予定通り始めるよ？いい？」
薮くんがそう言うと、みんなが頷く気配と、
ぼんやりとコンピューターの画面の光が付き始めて、
あぁ、いよいよなんだな、ってしみじみ感じる。
青白いブルーライトを含んだ光が、
真っ暗な世界に居た俺らをぼんやりと投影した。
そこでやっと、皆の顔を見ることができた。
「…あと五秒」
光くんのその言葉を胸の中で反芻させながら、
俺は残りの四つを数えた。
よん、さん、に、いち。
ゼロと同時に、
古びた学校のチャイムが鳴る。
マイクの音量をいっぱいにして、
伊野尾くんは黒い箱越しに喋り始めた。
『全校生徒、及び教職員の皆さんに連絡です。
ただいま、私たちがこの学校をジャックしました』
廊下から薄い木製の引き戸を伝って、
変声機越しの伊野尾くんの声が微かに伝わる。
『こちらでは今、5人の人質を預かっています。
有岡大貴、伊野尾慧、�睫斃彩蕁�八乙女光、薮宏太の5人です。
もし警察やその他外部の人間にこのことを報告した場合、
彼らの命はありません。』
少しの沈黙の後、
八乙女くんがマイクに向かって、録音した銃声を流す。
パァン。
鋭い音が、空気を伝ってゆく。
『…今のは警告です。私たちは武器を持っています。
無駄な抵抗はしないほうが人質の彼らの為、
自分の為ですよ。』
伊野尾くんはマイクを切ると、
薮、めっちゃいい台本じゃん、と、
突然薮くんを褒めたたえた。
薮くんに睨まれて伊野尾さんは、
すぐにマイクの電源を入れなおした。
『この学校に爆弾を一つ、仕掛けました。
皆さんにその爆弾を見つけてほしいのです』
『制限時間は午後12時まで。それでは……』
よーい、どん。
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