青春と隕石＊BEST ページ14
＊
＿＿もしも世界が終わるとしたら、
最後に何食べたい？
小学生のころ、そんな話をしていた。
それから数年たった今、
笑い飛ばしていた非現実が、現実になった。
ちょうど、去年の冬。
世界の最高機関だか何だかが、
来年、つまり今年の冬、
地球に巨大な隕石が衝突すると発表した。
その世界のなんたら機関によると、
隕石は地球の何百倍、
ぶつかったら地球は宇宙上で大破。
つまり、「地球」という星はなくなる。
去年の冬は世界中パニックになり、
暴動が起きたりなんやかんやあったみたいだけど、
一年もたって、それが当たり前になると、
今まで通りの生活を営むようになった。
一年も経つと、実感がわかなくなるらしい。
知り合いが死んで、その死体を見たときに、
「コイツ本当は生きてるんじゃないか」と思うように、
非現実的なことは、時間がたつたびに嘘かのように思えてくるものだ。
ふと、俺の手の中から、
ビニールのかさかさとした感触が消えていた。
隣を見ると、
さっきまで俺が持っていた焼きそばパンを、
美味しそうに頬張る光くんがいた。
「ちょ、光くん」
「�睫擇�ボーっとしてるからだろ」
光くんは焼きそばパンで口をいっぱいにした。
俺は取るのも諦めて、
冷たいコンクリートの床に寝転んだ。
俺から奪い取った焼きそばパンを奪い合う、
薮くんと有岡くんの声が耳に届く。
広げた掌に触れた、温かい感触。
伊野尾くんが俺の隣に寝転んで手を握っていた。
「空、暗くなったね」
「…そうだな」
昨日に比べて、空が暗く、重くなっていた。
隕石が近づいて太陽を遮っている、
まぎれもない証拠だった。
「一週間後、俺ら死ぬって信じられる？」
伊野尾くんは、俺から手を放して体を起こした。
その目は、暗くなった空を見ていた。
「…無理かな」
俺はそう言うと目を瞑る。
真っ暗な世界が、俺を包んだ。
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