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「…そんなに俺の悪口を言うのが楽しいか」
いつものように、コイツが俺の悪口を言ってきたとき、
俺は少し仕掛けてみた。
いつも悪口ばっかり、悪戯ばっかりされてるから仕返しだ。
「…ほぇ？き、聞こえてたの…？」
「ここに来てからずっとな」
「うわぁぁまじかぁぁぁぁ」
「いいから取り敢えず姿を現せ」
嘆く声とともに、
そいつは俺の目の前に初めて姿を現した。
見た目は女っぽいが…
今までの言動からすると男？
そして想像以上にいい大人…
「ねぇ、俺の事
「あぁ、今はな」
「へぇ…ほんとにいるんだ、そういう人」
そいつは俺をなめるような目で見た後、
近くのカウンターに腰かけた。
その時俺は、
そいつに違和感を覚えた。
その正体は、そいつの体にあった。
コイツには、頭のてっぺんから足の先まで、
しっかりと形がある。
俺が今まで見てきたそれは、
どこかしら掛けていたり、そこだけがぼんやりと輪郭を消していた。
こいつは、俺が今まで見てきた形と違っていた。
「…そーんなに俺のこと見て、
どうした、恋に落ちたのか？」
「んなわけねーだろーが」
俺はそいつを一蹴すると、
一瞬つまらなさそうな反応をしたが、
また姿勢を伸ばし、
今度は俺に歯向かってきた。
「言っとくけど、ここに住んでたのは俺のほうが先だから。
お前は俺のルールには逆らえないからな？」
「…なんだそれ」
ふん、と鼻を鳴らし、
ご機嫌な様子でそいつは俺を見た。
「…とりあえず、これからもお前がこの家を出るまで、
一緒にせいかつするからよろしくー」
そいつは手をひらひらと外国のセレブのように振りながら、
俺の前から消えた。
面倒な荷物を一つ、
抱えてしまったみたいだ。
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