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トントン、と包丁の歯切れの良い音だけが響く中、Aは密かに気まずいなと感じていた。
A「(何か世間話でもしたほうがいいのかしら……？)」
そんなことを食材を見つめながらボーッと考えていると、珍しく歌仙からAに言った。
歌「君、そこの椅子に座っててくれないか」
歌仙が指差した先にあるのは食事当番が井戸端会議をする小さな椅子だ。Aは疑問を感じながらも、控えめに椅子に腰掛ける。
歌仙は急いで手を洗ってくると、自分の前髪を結っていた結い紐を解きだした。
歌「料理をする時に邪魔そうにしてただろう？ほら、こっち向きに座って」
確かに、骨盤まで伸びるAの髪の毛はいくら後ろにやっても垂れてきて、食材に落ちないかと心配になっていた。
Aは少しくすぐったい気持ちになりながらも、おとなしく歌仙に髪を結ってもらう。
髪を結いながら、歌仙は徐に自身の事について語り始めた。
歌「僕の昔の主、細川忠興様は知っているだろう？
忠興様にも妹が居たんだ。でも細川家は当時、姻戚関係を引き合いに分裂が起きてしまっていてね。忠興様の妹婿、一色義定が裏切ろうとしていたのさ。
そのことを恐れて忠興様は義定を暗殺したんだ。……ただ、その兄の行いを恨んだ妹様は忠興様に斬りかかったんだ。
その時にできたのが顔の横一文字の傷。だから、それ以来この傷の話をするのは咎められていたんだよ」
目を見ていないからか、歌仙は昨日より饒舌だ。
A「私にその話をしてもよかったのですか？」
歌「あぁ。忠興様はもう亡くなられてるし、君にも僕のことを知ってほしいからね。
僕は、兄妹の在り方がわからない」
A「そう、ですか」
歌仙の言葉がAの頭に反響する。その言葉は拒絶か、歩み寄りか。
Aにそのことは分からなかったが、ふと後ろを見れば、歌仙の孔雀緑の色をした目は悲しそうに揺れていたことだけは分かった。
それは、”兄”としてどうやって接していけばいいか分からない、そこからきた歌仙から自身への罪悪感だと認識するには十分だった。
それならばAにできることはただ一つ。自分の知っている兄弟を教えてやればいい。それで歌仙が歩み寄ってくれるならば。
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黒雪 長谷部信者(プロフ) - 初めまして！ 人間無骨とても、面白かったです^^* (2019年7月8日 0時) (
レス) id: 64abb0ccf3 (このIDを非表示/違反報告)
ちあき(プロフ) - 続編はどこにあるのでしょう！とても気になります！待ってます！ (2019年4月1日 16時) (レス) id: c428feaf44 (このIDを非表示/違反報告)
しおキャラメル - 長可ちゃん！！！！人間無骨！！！！！好きです！ありがとうござます(*≧∀≦*) (2019年2月19日 1時) (レス) id: 2d0ba07ba8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：望田 | 作成日時：2019年1月26日 18時
