わたしのヒーローアカデミア。【ヒロアカ】 (ページ9)

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第2話-3 ページ9

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その鳥は名前を呼ばれたことにチチ、と反応すると、怪我人たちの元へ飛んでいった。そして怪我人の上で旋回しながら羽ばたく。うみが羽ばたく度、光る羽のようなものが怪我人の上に降り注ぎ、体に触れては消えていった。代わりに、みるみるうちに怪我人たちの怪我が治っていく。

「ぐっ、あ…？」

その中には、あの紫髪の少年がいた。少年は霞む視界の中で自分の怪我が治っていくのを見る。思わず顔を上げると、心配そうに自分を覗き込む灰色の髪が目に映った。

「大丈夫ですか？」
「あん、た…」
「勝手にごめんなさい。でも、あのままだと危険だと思って…。」
「……試験中、だろ…。人を助けてる余裕、あるんですか…」

少年は一度目線を下げた後、Aに問いかけた。こんなにすぐに恩を仇で返すなんて、と少年は自嘲する。だが、自分は今までまともにポイントを稼げていない。少しでも合格に近づくために、どんな手でも使わなければ…。
Aは少年の問いかけにすぐに答えなかった。じっと少年の目を見つめたまま、黙っている。まさか、個性の仕組みがバレた？この短時間で？ありえない──少年が冷や汗を一筋流したとき、Aはぱっと笑った。

「わたしの憧れのヒーローなら、きっとこうすると思ったから」

その笑顔に少年は呆気に取られた。Aは震える足で立ち上がって「それじゃあ、わたしは行きます！怪我、もう少しで完治すると思うので、できればそれまではロボットの近くにいかないでください！」と言い残すと、ふとももをパンと叩いて駆け出した。
少年はAを個性にかけることができなかった。数秒前の自分は『どんな手を使っても』と意気込んでいたはずなのに。あんな真っ直ぐな笑顔で「憧れのヒーローなら」と言われてしまって、動揺した。諦めたはずの自分の中の「憧れのヒーロー像」が、彼女に個性をかけさせなかった。

「…くそっ…」

少年もフラフラと立ち上がる。今からでも稼げるだけポイントを稼がなければ。