第12話 けいさつかんかかんごしさんになりたい ページ47
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「A。何を食べているんだ？」
Aは一人で着替えを済ませると教室で何かを食べていた。スティック状のビスケットのようなものを両手でもそもそと食べるAはどこかうさぎに似ている。そんなAに話しかけたのは常闇だ。
「カロリーフレンズだよ」
そう言うとAは鞄にしまっていた外箱を取り出して常闇に見せた。黄色いパッケージにはスタイリッシュなフォントで「高機能栄養食品」「ドライフルーツ入り」と書いてある。
「わたし燃費悪くて、すぐお腹空いちゃうんだ」
「意外と腹ペコキャラなのね」
そう言いながらAの席に歩いてきたのは、大きな目と大きな口の女子生徒。
「あっ…えーと」
「蛙吹梅雨よ。梅雨ちゃんって呼んで」
「AAです。梅雨ちゃん、よろしくね」
Aは梅雨に手を差し出そうとして、自分が食事中だったことを思い出す。慌ててハンカチを取り出そうとするも、梅雨は構わないというようにニコッと笑ってそのままAの手を握った。
「そのお菓子、美味しいの？」
梅雨は目や口だけでなく、手も大きい。その大きな人差し指を顎にあて、ケロ、と小首をかしげる。
「美味しいよ！でも口の中パサパサになっちゃう。良かったら梅雨ちゃんと常闇くんも食べる？」
「いいのか？」
「有難いけど、わたしは遠慮しておくわ」
梅雨はンー、と目を閉じた。彼女の個性は「蛙」。パサパサは嫌なのかもしれない。Aは「じゃあ常闇くんだけ」と、カロリーフレンズの自分が口をつけたのと反対側を、一欠片折って常闇に渡した。
「感謝する」
常闇はそれを嘴のような口に放り込んだ。数秒の沈黙の後、常闇の顔がぎゅっと萎んでいく。
「…なるほど」
常闇は今まさに『口がパサパサになる』を体験しているようだ。Aはあはは、と軽い笑い声を溢すと、水筒とティッシュペーパーを鞄の中から取り出した。キュッと蓋を開け、ティッシュで飲み口を拭くとそれを常闇に差し出す。
「常闇くんが気にしなければ、どうぞ」
微笑みながら差し出されたそれを、常闇は一瞬躊躇したものの「すまない、感謝する」と手に取った。それほど口の中の乾燥が不愉快だったようだ。
「いいえ〜」
水筒を常闇から返されると、Aはティッシュをひっくり返して、また飲み口を拭いて鞄にしまった。
「あら、Aちゃんはお水飲まなくていいの」
「わたしは食べ慣れてるから、結構大丈夫」
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作者名：いわき | 作成日時：2022年10月13日 1時
