第5話-2 ページ19
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電車とバスを乗り継いで、Aはようやく雄英高校に辿り着く。やはり早い時間なもので、Aの他に人影はなかった。校門の前で、Aは大きく深呼吸をする。──よし、意気込んで、Aは一歩を踏み出した。
出席番号の書かれた下駄箱で上履きに履き替え、教室を目指す。しかし、校内に案内図はなく、靴箱前でAは立ち尽くしてしまった。
(まあ、説明会じゃないし…案内図がないのも当然かな…)
Aは記憶を頼りに歩く。吊り看板に「ヒーロー科」の文字を見つけ、ほっと息を吐いた。
(ここがヒーロー科の教室かな…)
ようやくたどり着いたドアの取手を引く。そっとドアを開く。鍵はかかっておらず、カラカラと軽い音共に扉は開いた。
(どうしよう、どこに座ろう)
鍵がかかってないことに、Aはここが教室だと判断した。Aは綺麗に並んだ椅子と机とにらめっこしたあと、ドアから二つ離れた列の、一番前の席に座った。
(ここならクラスメイトと挨拶しやすいよね)
教室にたどり着き、机に座ることができたAはほっと息をつく。…しかし、いかんせん来るのが早すぎたようだ。なかなか次のクラスメートが現れることはない。そのおかげでAは退屈を持て余していた。
(退屈しのぎの本とか持ってくれば良かった…そこまで頭回らなかったな)
仕方なく、Aはこれからの学園生活に思いを馳せ時間を潰すことにした。どんな授業をするんだろう、どんなクラスメイトがいるんだろう、どんな先生がいるんだろう…そんなことを考えているうち、だんだんと瞼が重くなってきた。昨夜の睡眠時間を考えれば当然だろう。そのうち思考に靄がかかり、ぼうっとしてくる。
「ちょっと」
「わ！？」
そんな中、突然声をかけられAは大声をあげる。眠気の中で気付かなかったが、次のクラスメイトが来ていたようだ。
「あっ、お、おはよう！」
「そこ、僕の席なんだけどな」
「えっ？」
Aに話しかけたのは金髪の、ジト目が印象的な男子生徒だつた。端正な顔立ちをしているが、その気怠げな目がどこか屈折した雰囲気を醸している。
「……？」
Aはその顔にどこか見覚えがあるような気がした。しかし、どこで見たのか思い出せない。
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作者名：いわき | 作成日時：2022年10月13日 1時
