46 BADEND不可避？ ページ50
アザゼルさんが、メガネをクイッとあげる。
｢ですが、君は13冠色頭のご子息。私としてもあまりおおごとにはしたくなかったのですが、事が事ですので、特別に私が対応させていただくことになりました｣
な、な、え…？ちょっと待てい！なんで俺がこんなことに巻き込まれるわけ？！確かに尋問では何一つ答えなかったよ！？それでこんなお上が動くかね？！俺ってば本当に禁忌に触れたの？！
｢今回の対応は極秘ですので、内密にしていただけると助かります｣
｢……ええ。それで、一体なんの疑惑ですか。思い当たる節がありません｣
｢…本当にそうですか？既にご存知かと思いますが｣
わからんから聞いてるんやろがい！！
｢人間界不正渡航疑惑ですよ｣
…ん？………んん？？
全くもって見当違いのところからの指摘に、思わずスペキャ顔になる。
この世界は人間が滅んだ後の悪魔だけの世界ではなかったのか？
確かに空想生物学で人間のことを学んだり、悪魔として人間は大好物という認識はあるが、人間は空想上の生き物として周知された事実だ。人間はいない、それがこの世界のルールだと。
｢人間が、いるのですか｣
｢……ハァ｣
ため息をつかれた。大人からのため息は正直胸にクる。
｢つまり君はそれらの関連を一切否定するということですね？｣
｢…はい｣
少しの沈黙が訪れる。アザゼルさんは何やらちらりと横を見る。おそらく後ろに立っているバラム先生とアイコンタクトでもしているのだろうか。
本当に大人って嫌になる。
｢それでは、君が『サクラ』と呼ぶあの木については、どう説明するんです？｣
｢説明も何も、あれは紛れもなく桜。それだけです｣
｢人間界にしか咲かない木だとしても？｣
っそれはちょっと知らないなぁ？！
しかし、ともすれば合点がいく。魔界の悪魔たちがあの木のことを知らなかったのは、本当に魔界に存在しなかったからだ。
どうやら俺の前世の記憶から、妙な誤解を産んでしまったらしい。
しかし、疑問が生まれる。入間はなぜ桜を生み出せたのか。
｢少し聞きたいのですが、生み出した張本人に話は聞きましたか？｣
｢近々話を聞く予定です。サリバン様のご子孫でありますので、もう少し状況が整ってから…にはなりますが｣
｢なぜ私からなのですか｣
｢別件が立て込んでおり、私の都合上今日になりました。深い意味はありませんよ｣
ああもう嘘か本当か分からない。俺は捕まってしまうのだろうか。
そんな結末だけは絶対に回避しなければ。
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作者名：南条 | 作成日時：2021年10月13日 21時
