43 メーデーメーデー ページ47
*
「君がアスモデウスくんだね?」
昼休憩中に廊下を歩いていると、いきなり巨体の教師に絡まれました。げっという顔の隣のジャズ。どうやら誰だか知っているようだ。
「バラム先生だ。1度捕まると帰れないって聞く…だから俺はここで退散させてもらうっ!」
そっと耳打ちしたと思えば、そそくさと逃げた。
帰れないって何?!というかバラム先生?カルエゴ卿に強く出られるあの悪魔?!
「なにか御用で?」
「僕は魔歴の空想生物学担当のバラム。ちょっと君に話があってね。来てくれる?」
「一体なんの話ですか」
全く検討がつかない。説教?仕事?それとも食われる(物理)?
「うーんここじゃできない話」
そう言ってにこやかに笑う。その笑顔は、獲物を捕食せんとする肉食動物の目で、俺はゴクリと唾を飲み込んだ。
誰か俺の骨拾ってくれや…
*
バラム先生の研究室へと通され、ソファーに腰掛けて向かい合う。バラム先生が入れてくれた魔茶は恐ろしすぎて飲めない。
「急にごめんね。あまり人に聞かれたくない話だったから」
「どう言った要件です?バラム先生とは初対面の筈ですが」
「カルエゴくんから、君のこと聞いたよ。成績も素行も良く、概ね優秀な生徒だと。だから優秀な君から教えて欲しいんだよね。少し前に、ピンク色の花を咲かせた大木が植物塔を壊した事件あったでしょ。あの木について、僕も詳しく聞きたいなって」
……一体何を探られている?
あの木はなにか特別なものだったのか?ただの桜が?確かに入間の魔力がすごすぎて、普通よりもでかくなりすぎてたが、それ以外はなんてことない桜だ。
ただの先生の好奇心か、それとももっと特別な意味があるのか。
「質問の意図がわかりかねます。なぜ私に?博識な方なら他にもいるでしょう」
「うん、そうだね。でもね、あの木のことを知ってるのが君だけだったからさ。なら君に聞くのが妥当じゃない?」
俺だけ…?そんなわけない。入間も知ってたぞ。カルエゴ卿は知らなかったが、それは草花に興味がないからだろうし。確かに魔界に来てからは、桜を見たことないけど…
「本当に誰も?」
「うん。誰一人あの木の正体がわからなかった。魔植物担当のスージー先生もだよ。教師も知らない未知の情報を、君は一体どこで得たのかな」
シンと部屋が静まり返る。扉の向こうで、生徒たちが騒いでる声が、はるか遠くのほうに聞こえる。
英智をかき集めたとされる教師陣が、いくらなんでも桜を知らないなんてことあるのか?
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作者名:南条 | 作成日時:2021年10月13日 21時