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39 選択肢 ページ42

俺は書類をパラパラとめくって見てみる。

魔術開発、魔獣競技、魔植物、飛行競技…本当に多種多様な師団からのお誘いのようだ。

アスモデウスを演じていてよかったという嬉しい気持ちと同時に、役に期待値が跳ね上がるほど本当の俺は萎縮していく。
勿論期待に応えられる自信はある。だってアスモデウス・アリスは俺が作り上げたのだから。
しかしどうしようもなく逃げ場の無さを感じて、窮屈に感じてしまう。アスモデウス・アリス(こいつ)ならどんな人生だって歩めるはずなのに、俺の矮小な心は、家や体裁を気にしてしまう。

カルエゴ卿がカップをソーサーの上に置いて、こちらを見据える。

「この紙はお前への評価であると共に、選択肢でもある。今の自分が納得できる選択をしろよ」

選択肢。それは上級生へのコネクション作りとか、卒業後の進路とか、そう言ったことを言っているのではないのだろう。

他でもない"俺自身"の人生をどうするか…。

それが自由に選択できたなら、俺はどういった人生を歩んでいたのだろう?道化師の末路は、いつだってハッピーエンドにならない。笑えるよな、自分で選んだ道なのに。

「助言ありがとうございます」
「…今日はもう帰っていい」
「はい。失礼します」

この人生は、一体誰のためなんだ?



「あ、アスモデウス。今帰りか?」
「ジャズ。そうだが、お前もか?」
「おう、途中まで一緒に帰ろうぜ」

偶然にも廊下ですれ違い、ジャズと帰ることになった。

「なんだそれ?」
「ん?あ、これは師団の勧誘だ」
「えっ!もう先輩達に目をつけられてんのか!流石だな」

つい手に持ったままだった書類を、鞄に直そうとしたらバッとジャズに取られる。おい手癖を出すな。

「おいっ」
「えーなになに?………これ、全部お前宛て?」
「…のようだな」
「はーっ、優等生はすごいな…ん?魔術開発師団からも来てるじゃん」

何故か食い入るように、魔術開発師団のチラシを見ている。気になってた所なんだろうか。

「気になるのか」
「まあ入ろっかなーって考えてたとこだからさ」
「なにか理由はあるのか?」
「いやー単純に錬金術とか金になりそうじゃん?俺お金好きだし。あと魔術ぶっぱなすのは好きだから。」
「私利私欲だな」
「大体そんなもんだろ。自分が楽しいと思えることして生きていくのが悪魔じゃん?」

「それも、そう、だな」

なんだかすっかり忘れていた。今の俺、悪魔なんだよな。
少しくらい我儘に生きても、許されるのかな。

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作者名:南条 | 作成日時:2021年10月13日 21時

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