幕間 Sの心配 ページ31
｢入間くん新しいクラスはどうだった？｣
｢すごく楽しかったよ！サブノックくんと仲良くなってね！｣
うんうん。孫の学校の話を聞くというシチュエーションをまさか自分ができるようになるとは。生きていれば、こうした小さな夢も叶うものだと、老いぼれた体はしみじみと思う。
入間くんは本当にいい子だ。
純朴で、何も知らない。なんでも吸収してしまうスポンジのような子供。
｢なんとかやっていけそうでおじいちゃん安心したよー！人間だってバレてもなさそうだね！｣
｢あ、えーっと…それが…｣
なんだか言いにくそうにする入間くん。まさかもうバレたの？！高級な匂い消しを使ったのに？！
｢バレたの？！大丈夫？！何もされてない？！脅されてない？！誰にバレたか言ってごらん！｣
｢わっ！だ、大丈夫だよ！バレたけど特に何もされてないし！｣
｢…なにも？」
人間を空想生物と決めて、信じなかったのだろうか？
｢興味無いって言ってたし、アズくんはそんなことするような人じゃないから｣
｢アズくん？｣
｢うん。あす、あも…アスモデス…？っていう名前だよ。同じクラスの子なんだ｣
アスモデウス家の子か。初日に入間くんと同じく派手に目立っていた子。彼の特殊性を踏まえて、アブノーマルクラスへと入れたけど、まさか人間だと見破る程の力があったとは。これから要注意しなければいけないか。
｢きっと言いふらしたりなんてしない。アズくんは優しくて、尊敬できる人だよ｣
強い眼差しでそう言い放つ入間くん。
そう、ただのスポンジだけではない、自分をしっかりと持った芯のある強い子なのだ。
入間くんが言うのなら、大丈夫なんだろうな。
｢そうなんだ。それなら今度また家に連れておいで。お友達とならじゃんじゃん遊んでいいからね｣
｢…うん！｣
教育者として、祖父として、保護者として、入間くんの自由を奪ったりしてはいけない。
警戒もしないでおこう。子供たちの成長の妨げになってもいけないし。
でも一応カルエゴくんにそれとなくアスモデウスの子をよく見ておくように言っておこうかな。まあカルエゴくんなら心配ないだろうけど。彼は自分のクラスの子供のことは、よく見てるしね。
｢じゃあオペラの晩御飯にしよっか｣
｢わーい！晩御飯！｣
沢山食べて、沢山遊んで、沢山勉強して、どんどん成長して行くんだよ、入間くん。
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作者名：南条 | 作成日時：2021年10月13日 21時
