ありがとう、おめでとう ページ11
加藤side
.
｢しげちゃ！｣
｢たか、ただいま｣
｢んっ！｣
仕事から帰ってくると可愛いお出迎え
うん、癒される
俺が靴脱いでる間もずーっと両手広げて"抱っこ！"のポーズ
ちょっと待ってよ笑
てか、今日はどうしたの？
唇を尖らせて待ってるたかを抱き上げると
すぐに ふにゃん、と笑い抱きついてくる
｢しげちゃ、しげちゃ〜｣
｢うん、なぁに？小山たちは？｣
｢んっとね、あっち！｣
たかが言った通り、リビングに入るとソファで寛ぐ2人が目に入った
｢ただいま。ねぇ、たかどうしたの？｣
｢あ、しげちゃんおかえり〜｣
｢おかえり〜｣
いや、俺の質問は無視かよ笑
｢しげちゃ、あのね！｣
｢んー？｣
｢おめとー！｣
｢…ん？｣
｢あれだよ！なんだっけ？けーちゃん！｣
｢…笑 ほら、シゲちゃんの本が直木賞にノミネートされたでしょ？凄いねって話してたら、たかがおめでとうって言いたいって｣
｢あーなるほど。たか、ありがとう｣
たかの頭を撫でながら言うと
満足そうな顔でにこにこと見つめてくる
今日はなんだか一段と……可愛い
｢いやぁ〜でもほんっとすげぇよなぁ！スバラ！｣
｢うんうん！でもシゲちゃんならいつかやってくれると思ってたよ！｣
｢スバラ！じゃねぇよ！なんで上からなんだよ！笑
小山も！誰目線なんだよ笑｣
なんだかんだ文句を言いつつも、
自分の事のように喜んでくれるのが嬉しくて
俺、頑張ってよかったなって
ただの自惚れかもしれないけど、
あの時の俺は本を出せば何かを変えられるって
本気で思ってた
でも、現実はそんなに甘くはなくて
去っていく2つの背中が止まることはなかった
甘い考えで突っ込んで行った世界
中途半端なのは失礼だからとがむしゃらにもがいた
それがグループのためになるならと
こんな俺でも出来ることがあればと
大変だったし辛かった
何度も辞めようと思った
だけど、それは負けた気がして
背中をただ見つめていたあの日
俺に出来ることなんて何も無かった
それが、悔しかった
だからあの日の自分に言ってやるんだ
俺いま役に立ってるんだぞって
書き始めた頃を思い出して物思いにふけていると、
不意に服が引っ張られた
｢……しげ、｣
.
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作者名：貴虎 | 作成日時：2020年7月4日 0時
