【銀魂】ボールパークの恋愛算術

38 アカツキ ページ38

ペンの走る音が静かに響く。
それは途中で止まったり動いたり...、時には消しゴムで消してはクシャと紙の折れる音がした。







『分からない......』







問題集を見つめては参考書と睨めっこした。
行き詰まってしまい、一度ペンを置いて天を仰ぐように椅子にもたれ掛かった。
大きく深呼吸した後、天井の電気をぼんやりと眺める。




思い出すのは高杉先生の「聞きたいことがあったら来い」の言葉。
今、先生の力が必要なのは明白だった。
考えるまでもなく荷物と教材をまとめ立ち上がる。





重い荷物を持ちながら廊下を歩けば目の前に見覚えのある後ろ姿。
そして、何ともタイミングが良い。









『先生！』
『質問があるんです』








私の呼び掛けにゆっくりと振り返る。
そして私の腕の中いっぱいにある参考書をチラッと見て「来い」と言ってくれた。







付いて行く先に辿り着いたのはいつかの補習した教室だった。









『どこが分からねぇんだ』

『えっと、この数式なんですけど』

『ここは前にやった公式を使え』









シャツのポケットにあったペンを取り出して参考書に追加の説明を書いて行く。





それでも分からないところがあると思わず心が折れそうになったりもしたがここで負けては何を言われるか分かったもんじゃない。









『馬鹿、そこは違ェ』
『教えたばっかだろうが』









相変わらずの口の悪さだが、見捨てられるよりはマシだし何よりこの懐かしいやり取りは何だか心地が良かった。









『先生、』

『何だ、まだ分からねぇか』

『違いますよ』

『...』









ノートを取りながら話掛けてみる。
顔を見て居ないので今目の前に居る先生がどんな表情をしてるのかは分からない。
でも先生は黙ったまま私の話を聞いてくれていた。









『合格、できると思いますか？』

『...不安かァ？いつになく弱気じゃねぇか』

『そりゃ、不安にもなりますよ』









ノートを取るスピードが遅くなる。









『......先生が"頑張れ"って言ってくれたら頑張れそうなんですけど』









ノートを取る手を止め前にいる先生を見た。
先生は少しだけ隻眼を開いて驚いた顔をしたが直ぐにいつもの表情に戻った。









『馬鹿、さっさと手を動かせ』

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