35 ハル ページ35
必死に走る廊下で、私は顔を忙しなく動かしては彼を探す。ようやく見つけた後ろ姿に、「高杉先生」と大きな声を上げた。
彼はゆっくりと私の方を振り返り、息を整えながら止まってくれた先生に近づく。だが、何かを言おうとしても息が切れているために上手く声が出せない。
でも高杉先生は私が何かを伝えるのを待っていてくれているように黙って立っていた。
『私、決めました』
「何を」と聞きたげに眉間のシワを寄せ、私を見つめる。彼の視線を独り占めしているという優越感に浸ってしまいそうになるが、今はそれどころではないと一つ咳払いをした。
『……なりたい』
『数学の先生に、なりたいです』
ほんの少し高杉先生の目が見開かれたことに、驚きと嬉しさを感じてしまう。私の言葉一つで彼の調子を狂わせたことが勝ち誇りたくなるくらい嬉しい。
しかし彼は「勝手にしろ」と、鼻で私をあしらった。
『勝手にしますよ』
『高杉先生みたいに数学嫌いな子を好きにさせてみせます』
私がそうだったように、数学は教え方ひとつで好きにさせることも出来るし逆に嫌われることだって出来ると思うのだ。
つまり私の手腕にも関わってくることもあるわけで、そんな責任を背負うのは息苦しいかもしれないが挑戦してみたい。
『やれるもんならな』
そう、くくくと喉奥で笑われる。お前には無理だと、出来ないという否定を一度も言わなかった先生。
信じてくれていると自惚れて良いのだろうか。
『でも俺を好きになれとか……先生と同じ方法は使いませんから』
『当たり前だろ』
「聞きたいことがあったら来い」と言い残して踵を返して行く。その背中と私の距離は離れているかもしれないが、絶対に追いついて見せる。
「よし」と胸の前で握りこぶしを作り、我が担任であるあの人の元へ駆け出した。
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紫蘭(プロフ) - ハルさん» そうなんですか。でも応援して頂けるだけでも嬉しいです笑 私も、同い年だと分かって嬉しいです!親近感が湧いて仕方ないです笑 またお話出来るの楽しみにしてます! (2017年9月18日 15時) (レス) id: 684ce788b1 (このIDを非表示/違反報告)
ハル(プロフ) - 紫蘭さん» 実はですね、私中学受験をしたので高校受験がないんですよ……。なので本当に他人事のようにしか紫蘭さんに何も言えないのですが、本当に応援しております。同い年、嬉しいです。親近感が湧いちゃいます( ´ ∀`) 息抜き程度にでもまたお話ししてくださると嬉しいです。 (2017年9月18日 14時) (レス) id: eb197fc214 (このIDを非表示/違反報告)
ハル(プロフ) - 獅子の子さん» やっぱり高杉はいいですよね〜( ´ ∀`) ニヤニヤしちゃいますよね、考えてると。 この作品でキュンキュンしてくださったのならなによりです! 閲覧とコメント、どうもありがとうございました! 高杉さん万歳!!\(^-^)/ (2017年9月18日 14時) (レス) id: eb197fc214 (このIDを非表示/違反報告)
紫蘭(プロフ) - ハルさん» ハルさんも高校受験何ですか!!私も一緒です笑 いえいえ、全然大人じゃないですよ…中学3年のまだまだ未熟者です。私自信、ハルさんの方が大人っぽいです!ハルさんも身体に気を付けて勉強や更新の方頑張って下さい!応援してます!! (2017年9月18日 12時) (レス) id: 684ce788b1 (このIDを非表示/違反報告)
アカツキ(プロフ) - 銀皐月さん» 先生に、ですか!! それは素敵な夢をお持ちですね!! 「なれる」なんて無責任なことは言えませんがなれるように祈ってます。きっと良い先生になるんだろうなぁ、なんて思いつつ... その時は素敵な生徒にも会えると良いですね! コメント有難うございました (2017年9月18日 9時) (レス) id: 30e1da4c35 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:高杉同盟 x他1人 | 作成日時:2017年7月31日 23時