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｢ 伊藤、気持ちは分かるけど 相手は東京だよ? どんな人かも分からないんだし感情で動いても無駄だって ｣
｢ Aの言う通りだぞ ｣
チッ、と荒く舌打ちをして ぎゅっと強く拳を作る伊藤。かなり苛立っているのだろう、友達に対して かなり熱いやつだし。
いつもは 問題なんて起こっても 知らんぷりな三橋も、冷静な感じではあるが 眼には怒りを宿していて こちらも我慢するように拳を作っていた。
｢ 私、学校終わったら 東京の病院に行く。
佐川くん心配だし… ｣
｢ そうだな、佐川 叩き起して どんな奴に殴られたか聞き出そうぜ ｣
｢ …そうだな ｣
｢ お前も行くだろ? ｣
｢ そうだね…佐川 心配だし ｣
そんな会話をしていた時、ふっと三橋の奥に 見慣れない男達の群れが 路地から路地へ歩いていく。
この時間帯に 制服も着ずに歩いていく人達なんて珍しい。年齢もパッと見だが私たちと 変わりなさそうだったのに。
ぼうっとそちらを見ていると、三橋が目の前でひらひらと手を振ってくる。
はっと 彼の方を見ると、三橋だけでなく理子や伊藤も 心配そうにこちらを見ていた。
｢ すげぇぼーっとしてたけど、お前 そんなに佐川のことでダメージ食らってんのか? ｣
｢ え、あぁ…いや、ごめん。大丈夫 ｣
｢ 女の子には結構キツいよね、理子ちゃんも平気? ｣
｢ 心配だけど、学校抜け出す訳にはいかないし ｣
｢ そっか ｣
私達は 自然と四人黙って、そのまま学校に向かった。喧嘩やなんだとしたことはあるけれど、こんなに静かな登校は初めてだ。
私は 先程見た男達のことなんかすぐに忘れて、佐川の心配で頭がいっぱいになっていた。
前までは、周りのツッパリがどれだけ怪我をしてようが関係無かったのに、人ってものは簡単に変わってしまうらしい。
余程思い詰めた顔をしていたのか、三橋が 私の頭を突然にぐしゃぐしゃと掻き回す。
見上げると、真剣な顔で私を見て｢あいつなら平気だ｣と一言。
私はそんな三橋の言葉に なんとなく少しだけ安心して、そうだね、と言葉を返す。
ーーーさっき見掛けた男達が、また平凡な日常を壊していくなんて事には 気付かずに。
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