Seventeen。 ページ19
「高木さん、今日調子悪いんですか？」
商談の終わりに、同僚が心配そうにこちらを覗き込んできた。
伊沢と福良さんは、先程エレベーターまで見送りをしたのでもういない。
「伊沢、さんって社長なんだ」
「え、知らなかったんですか!?」
「うん。まあ……」
いいですか！ なんて説明し始める同僚に耳を傾ける。
2016年から始めたwebメディアのQuizKnock。幅広い知識をクイズ形式で学べるコンテンツを提供しているサイトで、去年株式会社として立ち上がった。
東大生を中心としてクイズや学びの面白さを提供するためにYouTubeに動画投稿をしていて、最近では伊沢以外のメンバーもテレビに出ることがある、と。
知らない間に、彼は私の手の届かない人となっていたのだ。
比喩的にも、物理的にも。
「でもQuizKnockさんのコラボ動画はどれも企画性に富んでいて面白いですから、この仕事は安泰ですねえ」
「へえ」
私の中の伊沢は、良くも悪くも大学四年生のあの頃の伊沢で止まっているのだ。
忙しなくパソコンを弄り、私の部屋を掃除して料理を作って。
けど私の知っている伊沢はもうどこにもいないのだ。
そこにいるのは世間様から持て囃される元東大生クイズ王で株式会社のCEOを務める伊沢拓司だ。
私の長年引き摺り続けてきたこの恋心も、そろそろ終わりにするべきなんだと神様に言われているようで。
「YouTube、見てみようかなあ」
「え〜！ 是非！ 東大主とか、朝それとか面白いよ〜！」
URL送ろうか？ なんて嬉しそうに言ってくる同僚に適当に頷く。
ごめん神様。もうちょっとだけ好きでいさせてよ。なにせ、大学時代から積み上げてきた恋心なんだよ。
そう簡単に、捨てれるものでもないんだ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 262人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
緑の白猫 - お話読ませて頂きました。人と人とのもどかしい関係を上手に書かれ、読んでいてウルッときました。良い作品をありがとうございました。 (2021年4月2日 16時) (
レス) id: 41276e8159 (このIDを非表示/違反報告)
たかせ(プロフ) - 奈都さん» 奈都様にそう言っていただけるなんて……嬉しい限りです……！ ありがとうございます!! (2020年4月4日 1時) (レス) id: 66eef8f813 (このIDを非表示/違反報告)
たかせ(プロフ) - 空白@吹部@Tp@不定期浮上さん» コメントありがとうございます!! 出来るだけ早く公開できるように精進致します!! (2020年4月4日 1時) (レス) id: 66eef8f813 (このIDを非表示/違反報告)
奈都(プロフ) - はじめまして。最初から最後まで夢中になって読み切ってしまいました。終わり方にかなり驚いてしまったのですが、どうか最終的には幸せな終わりが来てくれますようにと祈りつつ、続編も楽しみにしております…！ (2020年4月4日 1時) (レス) id: 1ea9b7d420 (このIDを非表示/違反報告)
空白@吹部@Tp@不定期浮上(プロフ) - 続編何年後でも待ってます！！！頑張って下さい！！！！ (2020年4月4日 1時) (レス) id: 16e27b9642 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：たかせ
| 作成日時：2020年4月3日 2時
