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．
好きにならない
．
もう、人を好きになりたくない
．
とは言ったし、思っているのも嘘じゃないけど
．
｢再会、早いね｣
．
彼に興味はあるわけで
昨日の目黒くんからの連絡通り
お昼に2人で食事に来た
私は昼休憩を使って来てるから
ちょうどいい時間
それにしても、ちゃんと個室がある所を選ぶなんて
アイドルはその辺しっかりしてるな
．
｢あの時、抱きたいって言ったの覚えてる？｣
｢覚えてるよ、俺そんな酒弱くないし
言ったことには責任持つよ｣
｢って言ってた割に会うのは夜じゃないのね｣
｢歌番組のリハの前しか時間がなくてさ｣
｢そっか、ごめんね時間ないのに｣
｢いや、会いたいって言ったの俺だし｣
．
むしろ来てくれて嬉しいよ、ありがとうなんて
仮にも、世の女子が黄色い悲鳴を上げるような
超イケメンアイドルにこんなこと言われたら
胸が鳴らない方がおかしい
．
｢出版社で働いてるんでしょ｣
｢翔太くんや康二くんから聞いてる？｣
｢うん。偶然って凄いなって思った｣
｢確かに(笑)
たまたま声掛けられた人が担当と同じグループって｣
｢どう？仕事は｣
｢んー……まだまだかなぁ
いい編集者になれてたらいいけど｣
｢東雲さんの記事は読んだことないけど
康二がすごく信頼してたから、いい編集者なんじゃない？｣
．
それに、慕われてるんだろうなって思うって
目黒くんは微笑む
きっと根拠はないんだろうけど
それが嬉しくて、なぜか安心出来て
たくさんの世界を見てきた彼だからこそ
得た視点があるのだろうと思った
．
｢あ、あとさ｣
｢ん？｣
｢東雲さん呼び、やめていい？｣
．
A、って呼ばせて
．
｢俺のことも蓮って呼んで｣
｢めめじゃなくて？｣
｢蓮、がいい｣
｢ふふ、蓮｣
．
翔太くんも康二くんもくん付けだし
お互いのこの呼び方に、密かに特別感を覚えた
れん、って綺麗な響き
．
｢蓮、時間は大丈夫？｣
｢あー…そろそろ行く｣
｢おっけ、歌番組頑張ってね｣
｢ありがと、Aも仕事頑張って｣
｢うん｣
．
そうだ、と言って蓮が立ち上がる
そのままテーブルに手をついて、顔を近づけてくる
前みたいにまた、キスされる＿＿＿＿
．
｢なんてね｣
｢…え｣
｢次に取っとく｣
．
そのまま私から顔を離して
にやっと笑った蓮
．
(……っ、)
．
やられた、と思った
私、彼のキスを期待してたんだって
嫌でも分かってしまった
．
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作者名：凛
| 作者ホームページ：https://twitter.com/j2hi_ve
作成日時：2022年1月12日 0時
