球団職員に花束を。

□.6 同級生の二人 ページ7

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…あ、そうか。

慎吾はファイターズから、トレードでジャイアンツに来たんだ。

初めてジャイアンツ球場に来た時、私、慎吾に挨拶したっけ。

49「え？お、おう…よろしくな」

って。

どことなく表情が強ばってて、今思えばあの慎吾でさえも緊張していたんだと分かった。

あの慎吾が。もう1回言うけど、あの慎吾が。

…そっか。

今度は私の番になるのか。

…っていうか去年の今頃も、球団職員としてジャイアンツの皆さんに挨拶したけど。

まさか1年後、もう一度、しかも全く別の場所で挨拶回りをすることになるとは。

人見知りだし。

先が思いやられる。

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慎吾はどんな気持ちだったのかな

突然

知らない場所に行くことになった時


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「ね、慎吾」

49「ん？」

「ファイターズって、どんなとこ？」

49「んー…遥輝さんがおるとこ」

「それは知ってる」

49「あと、大将とか近ちゃん、上沢とか剛…卓さんもおる」

「ほう…」

49「とにかく、いい人ばっかりやから。
心配する必要ないで」

「…そっか」

49「なんか、俺とAがトレードされるみたいやな」

「確かに」


慎吾がファイターズからジャイアンツに。

私がジャイアンツからファイターズに。

こんなことって、あるんだね。


49「あと、これやるわ」

「何これ…って、レッサーシンゴくんじゃん」

49「可愛いやろ。ちょっと前に発売されたやつ。
北海道に持ってき」

「うん、でも慎吾がモデルって思ったら可愛くない」

49「…返却してくれるか？」

「いえ。ありがとうございます。」


2人、同時に吹き出した。


「私の代わりのお世話係、頑張って探してね」

49「お前、いつから俺のお世話係になったん」

「え、いつも一緒だったし、おのずと？」

49「いつも一緒て…まあ、確かにそやったけど」

「でしょ？」

49「でも、Aにお世話された覚えはないわ」

「そんなことないでしょ。…あー、私も寂しいなぁ」


このやりとりも、暫くお預けか。

同じプロ野球界にいる以上会う機会はあるだろうけど、頻繁に話すことはなくなっちゃう。


49「…なぁ、A」

「んー？なに、レッサー」

49「レッサーてなんやねん。


…やっぱ、何でもないわ」


「そう？
そうだ、なんでもないと言えばさ、君の名は。のDVD一緒に見たね」

49「お前ボロ泣きやったな。
勇人さんも誠司さんも菅野さんもゲラゲラ笑っとった」

「心が繊細なんです、私。…そっか、懐かしいな。」


離れたくないなぁ。

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