ディアーマイラヴァー【山田哲人】その2

94愛 ページ46

side◎山田哲人

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Aが俺の家からいなくなって、ひと月程経った



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最初の数日はあまり実感が湧かなくて
帰って来たら、癖で『ただいま』なんて言って
『おかえり』が返ってこないことに
Aがいないことを実感させられたり


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(…美味い飯食いたいなぁ)


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Aが作った温かい味噌汁とか
スタミナ抜群の豚丼とか
野菜カレーとか、ビーフシチューとか…

あー…ダメや、考えすぎや
Aのことばっかり頭に浮かんでしまう


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俺の部屋、こんな広かったっけ
あー…そうや、ここはAの荷物があったスペース

Aが居ないことがこんなに寂しいなんて
一人の生活に戻るだけなのに
俺、慣れるんかな……

なんて考えてたタイミングで、着信音


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｢もしもし？｣

｢あ、もしもし哲人？あのさ、月曜日空いてる？｣

｢月曜？オフやし、大丈夫やけど｣

｢ほんとに？ちょっと付き合ってくれない？｣


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あー神様仏様、ありがとう！


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｢マタニティスクール？｣



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｢そ。定期検診の後にやるんだよね
プレパパ・ママの為の体験教室なんだけどさ、一人で行くのって心細くってさー

お兄ちゃんにお願いしたんだけど無理っぽくて
頼むなら哲人しかいないなーって

来てくれてありがと。ほんっと助かった！｣


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病院に行くまでの車の中
Aは後部座席で安堵の声を漏らした

Aは俺や慎吾さんの車に乗る時、いつも決まって後部座席に乗る
A曰く『写真撮られて迷惑かけちゃダメ』らしい
俺は別に撮られても構わないんやけど


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それよりも俺は

慎吾さんの代わりとは言え、不安だからという理由で
Aが俺を頼ってくれたことが嬉しい
Aにとってそんな存在であれたって確認できて
多分、ニヤニヤ隠しきれてない


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｢腹、大きなったな｣

｢もう6ヶ月なんだよー、早いよね｣


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1ヶ月ぶりに会ったAは、マタニティ服と呼ばれるワンピースを着ていて
あぁ、もうちょいしたら産まれるんやなって実感


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｢あとね、働き始めたんだー｣

｢え、マジ？｣

｢うん！表参道のアパレルショップなんだけどね？
店長さんがほんとにいい人でさ

体調とか病院のこと考慮してくれて
自由な時間に働かせてもらってる｣

｢めっちゃええやんそれ｣

｢ありがたいよほんとにー…頑張らなきゃ｣


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Aの声は高く弾んでいて
俺まで幸せな気持ちになる


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｢哲人打ちまくってるじゃん｣

｢おー、ちゃんと見とけよ？｣


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