ディアーマイラヴァー【山田哲人】その2

88愛 ページ40

side◎You

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毎日、泣いてた



．


国定の、治療法が見つかってない病気なんて

どうして私なんだろう
どうして、病気は私を選んだんだろう

先が見えない治療
何も無い白い部屋はまるで牢獄
じわじわと現れてくる病気の症状に
やるせない日々を過ごしていた私


．


窓の外を眺めると、手を繋いでる親子や
初々しい高校生のカップル
仕事帰りのサラリーマンがいる

いいな、元気があって
いいな、外に出ることが出来て


．



｢……皆に、会いたいよ｣



．


あの時、どのくらいの涙を流したんだろう


．


私はこの先どうなるんだろう
病気が悪くなったら、死んじゃうのかな

掴もうとしても掴みきれない未来に
不安と恐怖しか抱えられなかった日々


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だけど、だけどね


．


『川端慎吾、4試合連続ヒット！』

『兄妹揃って初のプロ野球選手、川端友紀！』

『坂本勇人、華麗にゴロを捌きました！』


．


『山田哲人、2打席連続ホームラン！』


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テレビやニュースでしか見ることが出来ないけど
大好きな、憧れの人たちの活躍が
私に元気をくれた

明日も生きようって、思わせてくれた


．


．


それから1年の入院期間を経て、私は退院した

とは言え、治療が終わった訳ではないから
通院に便利で、でも少しだけ落ち着いた場所に
安いマンションを借りて一人暮らしを始めた

治療が落ち着いたら、東京に戻ろう
当時の私は、そう決めていた


．


通院に時間を費やせるように
そして身体に大きな負担をかけないように
パートを2つ掛け持ちして働いた

入院前よりもかなり質素な暮らしになったけど
この環境が、私の心を落ち着けてくれたとも思う


．


そう、1度だけだけど
ハマスタにヤクルト戦を見に行ったことがあった

内野席で、お兄ちゃんや哲人には内緒で
2人が同じ日に、同じ時にホームランを打ってくれて
私はここだよ、って叫びたくなったっけ


．


やっぱり、2人が大好きだって、思ったっけ


．


．


それから月日が流れ、横浜での生活も
すっかり板に付いてきた頃


．


連絡を取ることもなくなったから
きっと、もう会うこともないだろうと思ってた
なのに、どうして、あのタイミングだったんだろう

それは4ヶ月半前、野球のシーズンが始まった頃


．


身体の調子も良くて、仕事の時間も増やしつつあった私が、パートの帰り道に出会ったのは


．



｢A、ちゃん……やろ？｣



．


紛れもない、勇人さんだった


．

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