84愛 ページ36
side◎山田哲人
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家に帰るとAが自分の荷物を片付けとった
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「A?」
「赤ちゃんのこと、二人に言ったよ」
「そんで…?」
「お姉ちゃんの家に行くことになったの」
「…ここ、出てくってこと?」
「うん、次の月曜日に」
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哲人、今まで本当にお世話になりました
ありがとうって頭を下げるA
柄にもない挨拶と、突拍子もなく突きつけられた決定に動揺を隠せない俺
えーっと、Aは友紀さんのとこにお世話になることになった、と…?
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「哲人にキャバクラで会った時にさ
私、お金を貯めなきゃいけないって言ったよね?
それ、病院代と出産と子育てのためなの
お姉ちゃんはきっと私の事情も汲み取って
家においでって言ってくれたと思うんだ
お腹もぷくっとしてきたし
ここは、お姉ちゃんの言うこと聞こうと思って」
「そっ……かぁ」
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Aも、最終的にはお姉さんには敵わないってことなんやろなぁってふと思った
でも、二人を見とると伝わるんよな
友紀さんはAのことが好きで
Aも友紀さんのことが好きってこと
お互いがお互い、口にすることは無いけど
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「哲人しばらく私のご飯食べれなくなるね〜
寂しくなるね〜ふふっ」
「全然寂しないし」
「あら、つんつんしちゃってこの!」
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Aはからかうように俺の肩を叩いて
家を出るまではバテ防止料理作るからって
エプロンをしてキッチンに向かった
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嘘です、家に帰ったらAがいるのが当たり前になっとった俺にとって
Aがこの家を出ることが寂しくてしゃーないです
でも、二度と会えない訳やないし
友紀さんの家だってここから遠くないとこにあるってこの前慎吾さんに聞いた
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「今日はね、チンジャオロースにしちゃう」
「マジ?ええなぁ」
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『私、誰とも結婚する気ないんだよね』
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いつか言った、Aの言葉が頭をよぎる
あの時からもう、Aは妊娠しとった訳で
同時に、勇人さんを生涯愛していくことは無いってことも、決まっとった訳よな
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「…A、あのさ」
「んー?なぁに哲人」
「前から聞こうと思っとったんやけど」
「うん?」
「何で……勇人さんやったん?」
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Aは一瞬、大きな目をさらに見開いてから
はらり、花びらが一枚散りゆくような
儚い頬笑みを浮かべて、知りたい?と尋ねた
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なんでそんな、消えそうに笑うんやって思いながら
俺は小さく頷いた
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凛(プロフ) - みくさん» みくさんありがとうございます◎更新分読んでくださったんですね!嬉しいです(^^)好きな子の前では弱気になってしまう哲人くんを書くのが私も楽しいです!是非最後までお付き合いお願いいたします〜! (2021年1月25日 20時) (レス) id: 0a834158c2 (このIDを非表示/違反報告)
凛(プロフ) - mihoさん» mihoさんありがとうございます◎遅くなってごめんなさい!!この2人を書くのはとっても楽しいので完結までお付き合い是非お願いいたします〜! (2021年1月25日 20時) (レス) id: 0a834158c2 (このIDを非表示/違反報告)
凛(プロフ) - かっぱさん» かっぱさんありがとうございます◎ゆっくり更新になってしまいますが、2人の関係をこれからも楽しく書いていきますのでよろしくお願いいたします(^^) (2021年1月25日 20時) (レス) id: 0a834158c2 (このIDを非表示/違反報告)
みく(プロフ) - 更新されるのを楽しみに待っていたので、連日の更新でまた凛さんのお話が読めて、とても嬉しいです☆哲人くんとの関係性がどう進んでいくのか、読みながらドキドキしながら、そして哲人くんの少し弱気になるところもどれも素敵で続きが気になります! (2021年1月25日 20時) (レス) id: 99fb4a38f5 (このIDを非表示/違反報告)
miho(プロフ) - 待ってました!更新有難うございます! (2021年1月7日 14時) (レス) id: 42a1b7dd13 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:凛 | 作者ホームページ:https://twitter.com/j2hi_ve
作成日時:2019年6月30日 0時