ディアーマイラヴァー【山田哲人】その2

76愛 ページ28

side◎山田哲人

.



怒涛過ぎる展開に脳みそが置いてかれとる



.


よし、1回整理しよ

Aと仲直りして家に帰ろうとしたら
勇人さんがおって、Aに母子手帳を渡して…
で、Aは、子どもの父親は俺やからと
背伸びをして俺キスをした…


.


いや待て、整理したところで
一気に処理できるような内容やないやん


.


(……初めてAとキスした
ほっぺたやなくて口……しかもディープなやつ)


.


＿＿＿ストップ！浸るな俺！それどころやない！！


.


｢A、ちょっと待てや｣

｢ほんとごめん哲人、今の全部忘れて｣

｢その母子手帳何？哲人の子って何のこと？｣

｢やだ、言えない｣

｢親友の俺にも言えないようなことなん？
そんなん親友って呼べへんやん｣

｢哲人、｣

｢話、聞かせてくれへんなら出てってもらうで｣


.


最後には厳しいことを言ってしまったけど
そうでとせんとAはまた隠し事を続けるはず

今にも泣きそうなAの表情が
抱える秘密の大きさを表しているようで
俺はAの二の腕を強く掴んだ


.


『あー…ごめんのりちゃん！
私、お酒控えてるんだよね』

『っごめん、ちょっとトイレ…っ』


.


今までのAと、彼女が持つ母子手帳
全ての疑問がシンクロして導いた答え


.


.


.



｢＿＿＿＿＿私ね、妊娠してるんだ｣



.


4ヶ月半なの、隠しててごめんね。

そうやろな、って思ってたものの
いざ本人の口から聞かされると
頭の上に岩を落とされたような感覚になって
｢……うん、｣なんて声にならないような一つ返事

当たり前やけど、俺の子やないもん

よく見たら少しふっくらしとるって分かるくらいのお腹を大切そうに撫でるA


.


｢＿＿＿＿＿＿子どもの父親は、勇人さん｣


.


頭が真っ白になった


.


………勇人さん？


.


｢…2人、繋がっとったん｣


.


俺の知らんとこで


.


｢ん……少し、ね｣


.


俯いて小さな声で呟くAに


.


(………何でなん)


.


どうしてなん、って肩を揺さぶりたくなった


.


Aにバレへんように、拳をぎゅっと握る

勇人さんをAに紹介したのは俺やん
なのに何で繋がっとったの教えてくれへんかったん

それに、ずっと好きだった子が
自分の1番尊敬しとる人の子どもを…なんて


.


(もっともっと、ドロドロになってく)


.


悔しい、やるせない、辛い、怒り
ごちゃまぜな感情が波に乗って襲いかかってきて
泣くことさえも出来ない


.

77愛→←75愛

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す