60愛 ページ12
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やめて、狂わせないで_____
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(掻き乱さないで)
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信号はいつまで経っても青色にはならなくて
メガネを外して、私の後頭部を押さえつけて
熱く、熱く唇を重ねた坂本さん
匂うような色香、香水の甘い香り
左手で私のポニーテールをほどいて
くるくると指で私の髪を弄びながら
何度も角度を変えてキスをする
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「や……やだっ……ふっ…んんっ」
「っは……こっち、」
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窓ガラスに腕を預ける坂本さんと距離が縮まる
いやらしい水音が車内に反響して
とろけてしまいそうなキスに腰に力が入らなくなる
一瞬唇が離れたと思っても、酸素を取り入れる隙さえも与えられないまま次の雨が降り注ぐ
私の前髪に指を絡ませて、時折ふっと微笑む理由は一体なんなんだろうか
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今まで色々な男の人とそういう経験をしてきたけど
誰もこの人に敵う人はいないのだ
後にも先にもこの人だけなんじゃないか
そんな思いが脳裏によぎるくらいには
私は坂本さんのキスに溺れる……あの時みたいに
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(いや、ダメだってば)
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「も、やめてください……っ!」
「わぁお……さっきまで抵抗せんかったやん」
「……だって、」
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捕らえられそうになってしまったんだもん
坂本さんのずるくてたまらないキスに
このままだったら、私の全部が坂本さんのものになってしまっていただろう……きっとそうだ
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「もうやめましょうよこういうの……」
「何、嫌いになったん」
「違っ……私、もう決めたんです
坂本さんにはもう抱かれません…この先二度と」
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信号がようやく青に変わって車が走り出す
哲人の家で3ヶ月ぶりに再会したあの時に…
いや、きっとそれより前から私は決めていた
もう沼に落ちない、溺れてはいけないのだ
私は私自身でこの子を守るって決めたんだから
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「えー…?寂しいなぁ俺」
「嘘!……私次の信号で降ります、
もう坂本さんには会いたくない……」
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片眉を下げて苦笑する坂本さんを見たら
どうしようもなく泣きそうになって
手が震えて、もう一度スカートを握った
『…俺のこと嫌いになった?』って
尋ねる坂本さんに、振り絞って、震える声で
『……嫌いです、』って呟いた
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「………そっか、」
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次の信号が赤でよかった
さよなら、と坂本さんに告げて
私は黒く艷めく車から降りた
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「ん?なんやこれ………!?」
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必死だった私は、この時全く気付いてなかったんだ
大切なものを、忘れてしまっていたことに
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凛(プロフ) - みくさん» みくさんありがとうございます◎更新分読んでくださったんですね!嬉しいです(^^)好きな子の前では弱気になってしまう哲人くんを書くのが私も楽しいです!是非最後までお付き合いお願いいたします〜! (2021年1月25日 20時) (レス) id: 0a834158c2 (このIDを非表示/違反報告)
凛(プロフ) - mihoさん» mihoさんありがとうございます◎遅くなってごめんなさい!!この2人を書くのはとっても楽しいので完結までお付き合い是非お願いいたします〜! (2021年1月25日 20時) (レス) id: 0a834158c2 (このIDを非表示/違反報告)
凛(プロフ) - かっぱさん» かっぱさんありがとうございます◎ゆっくり更新になってしまいますが、2人の関係をこれからも楽しく書いていきますのでよろしくお願いいたします(^^) (2021年1月25日 20時) (レス) id: 0a834158c2 (このIDを非表示/違反報告)
みく(プロフ) - 更新されるのを楽しみに待っていたので、連日の更新でまた凛さんのお話が読めて、とても嬉しいです☆哲人くんとの関係性がどう進んでいくのか、読みながらドキドキしながら、そして哲人くんの少し弱気になるところもどれも素敵で続きが気になります! (2021年1月25日 20時) (レス) id: 99fb4a38f5 (このIDを非表示/違反報告)
miho(プロフ) - 待ってました!更新有難うございます! (2021年1月7日 14時) (レス) id: 42a1b7dd13 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:凛 | 作者ホームページ:https://twitter.com/j2hi_ve
作成日時:2019年6月30日 0時