ふわり、初恋【上林誠知】

28恋＊side上林誠知 ページ29

side◎上林誠知

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幼なじみの、"女"に触れた



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「…やったな、俺」

「どーしたーばやし」

「あー…晃さん」

「浮かない顔してるね、珍しい」

「…出てました？」

「うん。昨日ノーヒットだったから？」


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練習前、晃さんがくしゃっと笑いながら
俺の背中を叩いた
うーん…そういうのじゃないんだよな…


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「や、違うっす」

「そ？まぁ、大丈夫だって！」


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もう一度晃さんが、今度は強く背中を叩く
にかっと白い歯を見せられて
いつも晃さんに救われてる俺だけど
今日は、気分が上がりそうにない


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(…キス、したんだもんな)


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"誠知が何考えてるのか、全然分かんないよ！"


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あの後Aは、少し涙目になって
頬は火照って…同時に目をとろけそうにさせて
マンションの自分の部屋に戻って行った


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東浜さんに告白されて、浮ついてたAを見て
気づいたら…唇を塞いでた
あんなにがっつくことになるなんて
自分でも初めて見た、自分がいた


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Aに『ごめん』ってメールを送ったけど
返信は案の定、来ない
まぁ…当たり前だよな


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(…あいつもあいつだろ)


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普通気づくだろ、中３の春にキスした時に
その時よりずっと前から俺はAが好きで
宮城に行く前、俺を忘れないようにって意味のキス
あの時は理性があったままだったけど


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福岡で再会してからだって
何度か俺は、Aに好きだって言おうとしたけど
全部空振りして、挙句の果てには東浜さんに先越されて


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なんで気づかないんだ？ってくらい鈍感なA
あいつもあいつだ
昨日、やっと長年の俺の想いに気づいたんだから


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(…唇、柔らかかった…な)


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「…うわー……俺最低」

「どうしたのばやし」

「甲斐さん、」

「あれ、そう言えば今日Aちゃんいないね」

「今日は有給らしいっす」

「そっか。あれ、残念がってる？」

「…そんなこと、ないっす」


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えくぼを見せて、肘で小突いてきた甲斐さん
…Aがいなくて、好都合だと思った
絶対…今顔を合わせたら気まずい
いや、俺が、気まずい。
Aはどうか、分からないけど。


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「何か、あったろ」

「…マジすか。分かります？」

「いつもと違うから、分かる
後でロッカールームな」

「…あざっす」


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『ロッカールーム』って甲斐さんが言う時は
俺の相談に乗ってくれる時
ありがとうございます、甲斐さん


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(Aの感触が、離れない)


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どうなる、"幼なじみ"？


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